この時代・未来を生き抜く術が詰まった物語
レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。
周作(twitter:DarvishShu)です。
今回は続編。学生だけでなく社会人でも十分役に立つと感じたお勧めのアニメ作品があるので紹介させていただきます。
私事ですいませんが、アニメは疎いです。
しかし「日本のアニメは今こんなにレベルが高くなってるのか…」と、今回の作品で感じたのでシェアさせていただきたいです。
紹介するのは「盾の勇者の成り上がり」レビュー・後編」です。
※少しネタバレはありますが、支障は無い程度です。一通り見終わった方も初めての人も分かるように書いてみました。
自分の頭で考える事の奥深さ
前編(第1クール)のレビューでも書きましたが、この作品の背景は今の現代社会に共通する部分が多いので、現代社会に置き換えて考えながら見ていくと、「成り上がる」とまではいかずとも「この社会で生き抜くためのヒント」が詰まっていて非常にためになります。
自己啓発本やビジネス書を読むのが苦手な方は、この作品がすごく分かりやすいので、こちらを勧めたいです。
自分が特に強く感じたメッセージは「自分のアタマで考えよう」ということ。
でも僕らは意外と常識や学校教育の洗脳で、自分の頭で考えているようで、実は何かに妄信していたりする場合があります。
そういう部分をこのアニメを通して客観的に見ることができれば、非常に実りある時間になるでしょう。
もちろん物語としても楽しめるし、音楽やアクションシーンもクオリティが高いです。
▼こちらでは第1クールのダイジェストはまとめてくれています。
後半から世界観が一気に広がっていく
話を戻して、後半のレビューに入っていきます。
個人的なレビューなので、盾の勇者の製作委員会が伝えたい意図とはもしかしたら違うかもしれません。
あくまで自分の見解なのですが、後半になって急に視点が世界規模に広がったように感じます。
今の世界を良くするには自分たちはどうしていけば良いかというテーマで話が進んでいきます。
日本での生き方だけを考えるレベルから、世界でどう渡り歩いていくべきかというスケールへ。
理由としては、物語が進むにつれて次第に明かされていく「世界」。
主人公達が召喚されたこの異世界は、世界の中のまだほんの一部であること。
他の国との関係を見ていくと、主人公が飛ばされたメルロマルクという国は世界でも確か4番目に大きな規模の国という設定。
そして「厄災の波」「龍刻の砂時計」の存在。
厄災の波はどうみても「地震」や「津波」のような自然災害のメタファーではないか?
回を追うごとに波の規模が激しくなってきますので、今世界で激しくなっている地震やハリケーンのような災害を暗喩しているように感じます。
そんな来るべき波に備えてどう解決していくかに主人公を含めた4人の若者が立ち向かうのが後半のテーマとなります。一気に問題の規模が広がりました。
この4人は国の大統領・総理大臣の様な代表者を比喩したものと受け止めて見ているのですが、考えすぎでしょうか?皆さんはどういう見方をしていますか?
ちなみに、自分の主張ばかりで相手の話を聞かない頑固な3人を「アメリカ」「中国」「ヨーロッパ」という位置づけで考えています。
「盾の勇者」は“これからのあるべき日本” という感じで見てます。
世界各国の首脳陣を争う事なくうまくつなげるために、尚文君はどういう選択をしていけばいいのでしょうか?
現代の学校教育システムはもう古い
主人公の尚文君の他に、この異世界に召喚された3人の男性。
ここにスポットをあてます。
彼らも来るべき波(厄災)に備えて、仲間を鍛えて準備を整えます。
有事に備え、それぞれ必要なことをしています。
でもどこか考え方が幼いというか、視野が狭いのです。
各々自分たちの正義感で突き進んでいるという感じです。そりゃあ衝突しますよね。
自分の“所有”を強調したり、大局を見ないまま自分の考えや見出した答えに固執して突き進んだりと、まさしく“自分ファースト”。
まさに今のアメリカや中国みたいです
お互いの意見を尊重しません。
結果話し合いをしても自分の主張だけを言い張り、会話にならないまま話がお開きになるという始末。
あまり考えたくないけど、多分国同士の戦争っていうのはこういう対話の断絶から生まれるモノなんではないかと感じます。
物語の行く末は彼ら(主人公を含めた4人)にかかっているといっても過言でないのに、あくまで自分たちの面子を優先させて歩み寄りをしない学生上がりの勇者たち。
そして、その会話にならない状態からなんとか和解して共闘させていこうとするカギとなる人物が主人公の尚文君。
不満や不安を募らせてそのうち爆発しないようにするには、普段からの対話がやはり大切で、意見を尊重してくれる人の存在も必要不可欠です。
主人公のパーティ以外では、どうやらチーム内ですら対話が出来ていないようで、コミュニケーションの大切さと難しさを感じます。
現実社会でもまさに言える大切な事なのですが、これも「ダメな事例」ということで反面教師にしてもらえたらと。
自我を捨てきれない彼らを結託させるのは結構難易度が高いですが、ここで知恵をどう振り絞るのかというのは今後のストーリーで非常に興味深い部分であります。
…でもコレ、あまり交渉とか説得のような会話シーンばかりだと「アニメ作品」としてはやや説教臭く感じて、若いファンが離れてしまう恐れがあり、アクションシーンなどを盛り込んで調整していかないと物語に躍動感が出ず、作品に対する支持が集まりません。
クリエイター陣の頭の悩ませどころです。
なので、一番大事な決戦の最中というのに内輪揉めをするシーンがあるのですが、そこでの会話に結構大切なメッセージを詰め込んでいたりします。
物語後半、ようやく上り調子になってきたとはいえ、尚文君の前途は多難になりそうです。
どこまで踏み込んだ描写をするのかのバランスが大事
今の日本の現代社会と共通する部分が多いこの作品では、社会問題を匂わせるような気になる描写がいくつかあります。
盾の勇者の製作委員会の方たちがどこまで意図してこのシーンを作ったのかは分かりませんが…
奴隷を売っているお店や、回想シーンで虐待の描写があります。
獣人の奴隷たちは檻に入れられて暗い部屋に幽閉されています。これは現代社会に潜むペットビジネス産業の裏を描いているのではないかと感じました。
他にも宗教を戦争の道具にするケースがこれまでの歴史上では何度もありましたが、信者達を戦争のマインドへ導く流れなどもここでは比喩的に描写されています。
そういう部分も現代社会への警告としては大事ですが、そればかり描いていたら作品が重たくなるのでアクションや逆転劇等を入れながらうまくバランスを取りつつ大事なメッセージを挟みながら物語は進んでいきます。
盾の勇者の製作委員会、そしてクリエイターの皆さんのそのバランスを考えた脚本力・構成力には感動モノです。
現に見てて中弛みすることなく最後まで楽しめました。
勇者の“選択”とは
“いつか世界がすべての命に犠牲を強いる時が来るそうで、その時主人公達は自然を取るか人間をとるかの選択を迫られる”みたいです。
これは何を表しているのでしょうか?
そして世界はどうなっていくのかますます目が離せなくなります。
「厄災の波」の正体も自然災害のメタファーとばかり思っていたのですが、波に紛れてほかの国の勇者もやってきたりと物語終盤につれてどんどん謎が深まるばかりです。
「カースシリーズ」という「怒り」を糧にして発動する特殊能力も非常に興味深い設定で、ほかの武器で発動した場合はどんな効果があるのかなど考えていたら、この物語にすっかり引き込まれているのを感じます。
こんなにまだ解明されていない部分を残しつつ物語は終わりに向かうのか…と感じたのですが一応のハッピーエンドに行きついたと思います。
尚文君は困っている人をほっておけない性格故、これから先もまだまだ選択と葛藤の狭間でもがいていくでしょう。心強い仲間に支えられながら…
でも人間は選択することができる生き物です。
どういう選択で皆を幸せに導いていくのか、これからの物語も非常に期待が膨らみます。
女性キャラが少なめのメッセージ性の強いやや硬派な作品ですが、作品から伝わる「成り上がるための知恵」を逃さないように続編も見たいと思います。
作品を見る前は、「盾」という設定に違和感しか感じなかったのですが、蓋を開けたら『今の現代社会に絶望している方や希望を持てない方を心の奥底から勇気づけてくれる、立ち上がる勇気を与えてくれる』そんな素敵な物語でした。
最後に作品の中で個人的に一番響いたセリフを紹介して終わりにします。自分自身にも常に言い聞かせておきたいです。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
お前が自分で考える頭を持ってたら、ここまで話(事態)はこじれなかったんだ。