感想『青ブタ』ほぼ全ての方に刺さるテーマだからこそ見てほしい

人間関係の心の葛藤を見事に描いている作品

この作品を見るきっかけになったのは、妙なタイトル。

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

バニーガールにつられて見たわけではないですが、結果として見るきっかけになればそれでも良いかと。

登場する人物の心情などを見事に上手く演じ切る凄腕声優さんのお陰で本当に素晴らしい作品になっています。

主人公たち主要メンバーは学生。そして日常に、人間関係でよくある問題をテーマに切り込んだヒューマンドラマ。

ストーリーとしては、心情的に問題を抱えた人物が主人公のサポートをうけながら、少しづつ自分自身と向き合い、前に進み始める事を決めて解決に向かうパターンのオムニバス形式のストーリー。

同調圧力とか、関係のこじれ、友達の定義など、学生時代に経験するごく普通にある問題なので、学生は勿論大人世代まで幅広い年代の方が共感しながら見てもらえる内容です。

直面する問題が他人事だと思えないからこそ感情が入り、引き込まれるのでしょう。まずはWikipediaにて作品の詳細を紹介。

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

※画像クリックすることで公式サイトへ移動します
原作/鴨志 田一
監督/増井 壮一
シリーズ構成/横谷 昌宏
脚本/横谷 昌宏
アニメーション制作/CloverWorks
放送日
2018年10月~12月
劇場版:2019年6月15日
電撃文庫から刊行される同名小説シリーズのアニメ化作品。TVアニメだけでなく続編「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」も劇場公開された。
ラブコメ要素とSF要素が融合した不思議な青春群像劇は、各キャラの人間関係をしっかりと描いた人間ドラマとしても高評価
電撃文庫『青春ブタ野郎』シリーズは累計100万部突破

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

伝え方によっては重たくなってしまうテーマを見事に描ききった作品

ちょっとファンタジーな部分を絡めつつもこういうテーマに切り込んでくれたこの作品はかなり評価が高いです。

特に学生にお勧めしたいです。

学生と言わず、「同調圧力」などを主とした社会人になってもどこかで遭遇する問題なので、ほぼすべての方に刺さるテーマではないかと。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
ただ、個人的にツッコミたい部分があります。

せっかく切り込んだ素晴らしいヒューマンドラマなのに、タイトルこんなのにしなくてももっと他のタイトルでも良かったのではないかと感じます。

タイトル名とヒロインのバニーガール姿が表紙なのが、なんかイメージで損しているというか…もっとたくさんの人に見てもらいたい良作なのに勿体なく感じます。

今どきのライトノベルがえらくタイトルが長いものが多いのでその影響だったのでしょうか?

それか扱っている題材がやや難しいので「思春期の諸君!バニーガールに出会えるアニメだから何も考えずにとにかく見てくれ!」みたいな導入の意味を込めて名付けたのだろうか…

人間関係に悩む方へのSFチックな入門書

SNSなどの友人付き合いや他人との距離の置き方など、誰しもが悩む道を分かりやすく描いてくれているので、人間関係に悩む子がいたら息抜きに勧めたいですね。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
他にもこの作品の良さは「こうすれば解決だ!」というものではないという部分も秀逸です。

色んな立場、色んなケースの人物を丁寧に描きながら、巻き込みながら物語も進んでいきます。

そしてどの話も最後は自分自身の気持ちときちんと向き合わないと本当の解決に向かえません。

どこかで気持ちをごまかしていても前には進まない…っていうのもきちんと描いているのが良いですね。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
自分の心の醜さに人は向かい合おうとしていないのです。

でもそこときちんと向き合う事で素敵な大人になっていくのです。そういう意味を込めた名言がこの作品にはいっぱい出てきます。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
▲ヒロインの桜島麻衣さん。主人公(梓川咲太)の先輩に当たり、未熟な主人公の精神的な支えとして、「彼女がメインの話」以外でも精神的な支えという面で存在感があるのが良いです。作品を通して“ヒロインの存在感のバランス”が良いというのを感じました。

見えてこない部分に注目

作品の中に出てくる主要登場人物のセリフや言動。

この一言一言に結構後づけみたいなのがあり、言葉の裏に隠された心情を推理していくのがこの作品の一つの醍醐味でもあります。

先程も書きましたが、自分の見ようとしていない内なる部分。

「本当は分かっているけど向き合えない」
「受け入れないといけないけど体と心が安定していない」
「認めてしまうと自分が惨めだから進みたくない」

などのケースは自分たちにも心当たりがあると思います。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
その描写が秀逸なので、彼らの発する言葉や表情につい惹きこまれてしまいます。

この辺がこの作品、アニメなのに実写ドラマとかと比べてもそん色ないくらい上手く描かれています。

弱い自分をさらけ出すことが難しい世の中になってしまいましたが、その難しい部分をふと出す描写は実際に見て感じてもらいたいです。

妹に対しての兄という立場上、主人公は年齢のわりにやや大人っぽくて冷静に見えるのですが、大事なものの為なら時として大声を張り上げたりするような熱血さもあり、それを総称して「青春ブタ野郎」と言うのでしょう。

最高の褒め言葉ですね。

劇場版でさらなる展開へ

このアニメは12話構成で、その続きが劇場版という流れになっています。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
劇場版はネタバレをしないように言うと、「ミステリー」や「恋煩い」、そして「選択することの難しさ」など色んなテーマを入れているので、劇場版くらいの尺でないとまとめにくいというか、分かりにくいと感じました。

劇場版になるべくしてなったという感じで、主人公の「選択」を一緒に考えながら見ていくことでより感情輸入しながら見ることが出来ます。

そして他の作品とは違うこの作品の世界観ならではのラスト。

見終わったら、人生の中で相手にも自分にも優しくなれるんではないかと感じます。

主要人物の中の一人がとても大事なことを言ってくれます。

この物語の核になっている部分だと思うし、名言です。

人間関係で悩む事は多いですが、原点はここに行きつくのだろうなと…抜粋しますと

『人生って優しくなるためにあるんだと思っています』
『昨日のわたしよりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいなと思いながら生きています。』

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

この意味にたどり着くのがこの劇場版のラストかなと
まぁ、こんなに慈愛ある作品だというのは、タイトルだけ見ても分かりづらいのは事実ですけど。

結論、劇場版まで見るのをお勧めしたいです。

社会の荒波で疲弊している方にも、一度肩の力を抜いて見ていただきたいです。

大人になって「擦れてしまう」よりも「優しくなる」ほうがずっと素敵ですから。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。