感想『アラフォー男の異世界通販生活』生き方の軸がブレてないのが良い!

アラフォーという点がこの作品を楽しむポイント

レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

昨今のアニメは数が多く、全部視聴しきれません。

そのため初めの数話を視聴しただけで最後まで視聴するかどうかの“1話切り”や“3話切り”などのスラングがSNSでは見られます。

アニメの制作は大変手間のかかるものだし、多くの人が作品に関わっています。

作品一つ一つを大切に見てほしいとクリエイターさんは感じているものでしょう。自分もクリエイターのはしくれです。世に生み出した作品1つ1つを大切にしたいです。

…それでもやや作品数が多すぎる感は否めません。

話を戻します。

今回レビューさせていただく『アラフォー男の異世界通販生活』という作品も、“またなろう系のアニメ化か~”という飽きにも似たような感想が出ていて、そんなレビューの影響なのか早々と視聴を辞めてしまった方もいるようです。

実際、この作品も“異世界モノ”というジャンルにあるあるのテーマで、ご都合主義な展開も沢山出てきます。

現代世界と違う世界に飛ばされてしまうものの、現代世界の通販とはお金を通して売買の疎通ができるような設定になっていて、そこを駆使して異世界を強引に蹂躙していくような感じで物語は進んでいきます。

この辺の強引さはさすがにSNSなどで突っ込まれそうですね。

異世界に来て、現代のスキルを駆使してブイブイいわすやり方はもう沢山見てきたという感想もありますが、自分が目をつけていたのはタイトルにある“アラフォー男の”という部分でした。

1話の冒頭でものすごく簡単に現代社会での記憶が描かれます。

この記憶を元に主人公であるアラフォーの独身男『ハマダ ケンイチ』さんのとる行動を見ていけば、“なるほど”と頷ける部分が出てきて一味違う異世界ライフを視聴できるのではないでしょうか?

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
似たような作品で以前『異世界のんびり農家』というものがありましたが、まずは以前のテンプレに当てはめるのではなく、ニュートラルで見てみるのが良いかと思います。

それでは同じアラフォーの人間が感じたレビューにお付き合いください。





スローライフがしたいという軸はしっかりしている

この作品の作者さん(朝倉一二三さんという方)はおそらくアラフォーの方でしょうか。

アラフォーである自身の体験や、もし異世界に飛ばされた場合はどう感じるかなどをしっかり内省してから執筆をしたのではないかと想像できます。

もちろん作品製作と同じくらい通販にハマっていたのも容易に想像できます。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
はじめにとてもざっくり異世界の森に転移する前のエピソードが紹介されるのですが、以前の主人公は仕事に忙殺されたゆとりのないサラリーマンだったのが伺えました。

後の彼のマインドを形作るミソです。

だからなのか、彼の中では“もし人生をやり直せるなら今度はゆったりしたスローライフを送るんだ!もう仕事に追い回されるような人生はやめよう!”という“芯”が出来ていたのです。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
この部分が異世界モノと言われる他の作品と違った所でもあり、今まで仕事ばかりだったアラフォー世代や日ごろ仕事で殆ど自由な時間の無い会社員にとっては共感できるのではないでしょうか?

今までの異世界系の話で特に見られる要素としては、主人公が何らかの功績を上げた後、その対価なのかヒロインをはじめとした女性達にモテまくってハーレムを築くという流れが実に多かった。

もう少しざっくり言うと、新しい人生だからと野心に燃た人間が多かったです。

これは視聴者や読者の願望を、小説やアニメという媒体で叶えて高揚感を持ってもらいたいという視点で描かれていて、実際に支持も得られています。

しかしアラフォー主人公のケンイチさんは、何か功績をあげたとしてもその恩恵にあずかろうとしたり、更に勢力を拡大しようとしたり、すぐハーレムに走ったりしませんでした。

もうアラフォーだからか?

いえいえとんでもない。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
アラフォーの人間にだって当たり前に性欲はあります。それに出世欲もあります。

でも心が疲れ切っていたら性欲よりも休息や自由などを優先したくなります。(経験者なら分かると思います)

腹が減ってはいくさが出来ないように、精神的なゆとりや元気というガソリンが無ければ性欲にも移行できません。

彼は異世界にやってくるまで、殆ど自由な時間無く働かされ続けた過去があったので、たとえハーレム状態になれたとしても自分の中での優先順位を決めていたわけです。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
普通男の人だと、美人な方に言い寄られたら悪い気持ちはしません。そこになびかなかったのは不思議に感じた方もいたと思います。

でも本人は“もし人生をやり直せるならこういう生き方がしたい!”という軸が固まっていたからこそ色んな誘惑に惑わされませんでした。

商売面も同じです。

無暗に儲けてはさらなる大手口との契約を取り付けてと、もっともっと儲けようとはしませんでした。それにそんな事をすれば商売のバランスが崩れます。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
アラフォーというか、ある程度人生を経験してきた中で、適度なお金があればあとは人生にとって大事なものはお金よりも“自分で自由に使える時間”だというのを感じていたのでしょう。

おそらく作者の実体験からそういう主人公ケンイチさんの思考にトレースしているのではないかと予想できます。

だから若年層視聴者さんはガッツかない主人公に物足りなさを感じた視聴者もいたかもしれませんが、本人は当初の目的からブレずに突き進んでいるだけで自分は見ていてしっくりきました。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
筆者に聞いてみないと分かりませんが、コレ決して性欲減退してたわけじゃないです。

レビューを書いている現段階。視聴してからまだ物語は最後まで到達していませんが、今後の展開もなんとなく想像できます。

物語を盛り上げるべく恐らく様々なアクシデントに巻き込まれていくことは予想できます。それでもケンイチさんはあくまで背伸びせず“足るを知った生き方”を続けていくと思います。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
自分の目の届く範囲で困っている人は助けながらも決して必要以上の欲を出さない。

これからのアラフォーもしくはこれからアラフォーになっていく20代30代の視聴者に向けた1つの生き方の提案を描いているのではないかとも取れます。

そりゃあ便利なチート通販機能なんかは現実世界には無いですけど。

重機を所かまわずポンポン持ち出せてしまう四次元に似たような都合の良い機能は存在しません。

でも自然に囲まれた中でのゆったりした生活には、忙殺される毎日を送る人間からしたら憧れるしいくらかは実現可能でしょう。

それを少しこの作品で描かれた様を頼りにイメージしてみてはどうか?憧れがあるなら仕事から一旦立ち止まって、休日をしっかりとって家庭菜園とか出来る範囲から実践してみてはどうか?という感じでしょうか?

そうでないと一生仕事に追われる毎日です。

この作品はそんな仕事に苦しむ方々に対してのメッセージとも取れます。

タイトルについている“アラフォー男”という言葉がそれを感じさせます。

アラフォーほどになれば人生も折り返し時期。ある程度自分の生き方を見直す時期にも入ります。

ケンイチさんを取り巻く環境はこのまま落ち着いてくれるとは思えませんし、最後まで視聴した後また感じるものは変わってくるかもしれませんが、どんなことが起ころうとも自分の生き方軸はぶらさずに生きたいですね。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会




やっぱり“アラフォー”がミソ

自分はアニメはある時から偶然見始めたタイプなのですが、昔からアニメを視聴してきた世代で40代というかアラフォーになった方も多いと思います。

人口ボリュームゾーンでも多いのが40~50代ですし。

だからそんな層には作品を通してこれまでとこれからの人生を見つめ直すきっかけになれば良いのではないでしょうか。

仮に異世界に行けたとしてもあなたは“何者か”になりたいですか?

何か偉大な事を成し遂げなくても自分が納得する充実した人生を送ることが出来ればそれで良いんではないでしょうか?

根っからの女好きならそれはそれでハーレムにひた走ればいいと思うのですが、アラフォーになって感じるのは、自分の時間を大切にしたいという事です。

そして人生で使える時間も有限です

これは当たり前のことなのですが、アラフォーになれば余計に実感出来ます。

そう考えると、共感できる部分や若い時からの心情の変化という点でも“アラフォー”なのが作品のミソになっているように感じます。

10代の青年が異世界へ転生してきたら「ビックになる」とか「ハーレムだ」とかいう思考についつい行きがちですが、40代だと「これからの人生、どういう自分の道を歩もうか」と少し俯瞰した考えができます。

同じ異世界モノの例として「このすば」のカズマさんを参考に対比してみれば、分かりやすいです。

主人公の見た目はまだ30代くらいだし、作画面でも色々と怪しい所はあるのですが、同じアラフォーだからこそ“なんかこの心理、分かるな~”と感じる部分があって親近感の沸く作品でした。

他にも視聴していく中で気づいたこととして、作者さんは2015~2020年くらいは「このすば」のようなアニメ作品を見て、作品づくりを色々研究されていたというのもうかがい知ることが出来ます。

異世界でドローン飛ばすなり、異国に行くならこんな感じでシンプルに楽しんでみたいものです。何か派手な戦闘をかましたり、ビジネスをしないといけないわけではないのですから。(絵的にはそちらのほうが迫力あるのですけど)

ただし、ご都合的に美味しい所があったり、若い女性ばかりが主人公の元に集まってくる流れはやや願望を描いたものに近い感じでリアリティに欠けますね~。

蛇足かもしれませんが、物語最後の方…目に見えて作画が悪くなっています。作品によって力の入れようが違うのは格差を感じてあまりいい気持ちはしません。どの作品もクリエイターさんの努力の結晶なので、大切にしてほしいです。

後半の作画が目に余る…世に発信するならきちんと描こうよ。

この作品は小説だけでなくコミカライズもされています。

興味のある方は是非読んでみて下さい。

©朝倉一二三・ツギクル・うみハル/アラフォー通販製作委員会
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。