感想『るろうに剣心』古参ファンは複雑な心境

アニオリに思う所あり

放送される前からレビューを皆さんと是非シェアさせていただきたいと感じていた今回の作品リメイク版「るろうに剣心」


この作品の原作はジャンプ漫画で、連載されている時自分は大学生だったのを覚えています。

漫画連載は今も“北海道編”が続いています。

当時のるろうに剣心もとい“るろ剣”の人気はすさまじく、単行本巻之1が瞬く間に売り切れていたのを覚えています。

剣を交えるアクションが新たな漫画での表現方法の開拓みたいで印象深いシーンがいくつもあります。

九頭龍閃”など技の名前だけでなくエフェクトも唯一無二のものばかりで本当に楽しみにしながら連載を楽しんでいたのは良い思い出です。

単行本が飛ぶように売れていたので、当然アニメ化もあっという間に決定。

しかしアニメの作画が変なテイストで、見かねた原作者の和月伸宏さんがアニメーターの方々に指導まで行ったとか行かないとか色々な逸話もあります。

それくらい21世紀前後に連載されていた“るろ剣”はジャンプを支えた大人気作品でした。

その作品が20年ほどの月日を得てリメイク

今度のアニメは原作者の和月さんが監修として関わっているということで、放送が決まってからはかなり期待していました。

自分の若いころに一番影響を受けた作品でもあります。

志々雄との戦闘シーン(5連撃の所)は感服のあまり何度も模写したりしてました。だから分かる人にはわかると思いますが、自分は“和月組”の残党みたいなつもりでいます。

レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

自分の学生時代の漫画のバイブルみたいな作品“るろ剣”のリメイクアニメのレビューをコアなファンだった一人として書かせていただきます。

コアファンだったからこそアニオリに関しては色々感じる部分もありました。

単純な賛否なんていう浅い所ではないので、想いを皆さんとシェアできればと感じています。

古くからのファンの人も、新規ファンの方も是非お付き合いください。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会

今なら理解できる敵キャラ達

主人公はこの30超えた中年のおっさん、緋村剣心さん

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
ジャンプ漫画出身なので、そうは見えないナリをしています。でも昔の30代って結構年食っている感じなので今改めて見返すと相当若く描かれてますね。

1期の冒頭から王道の展開が繰り広げられるので、初めての視聴者にも分かりにくいと感じるストレスなく見ていけると思います。

途中で明治の歴史に触れながら楽しめる温故知新アニメにもなっています。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
この作品は史実に沿わせた物語なので、その辺の歴史を知っていればより楽しめるのではないかと感じるのは昔と変わらない所。

当時自分は明治維新後の日本の動きや新選組についてあまり詳しく知りませんでした。

だから明治以降の歴史を学ぶきっかけになったのがこの作品とも言えます。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
作者の和月さんは新鮮組が大好きというのは作風から感じられましたし、自分もこの作品に出てくる“斎藤一”という人物をきっかけに新選組の歴史を学んでいきました。




さて、視聴を進めていく中で物語の最中には必ず剣心達に立ちはだかる勢力が出てきます。

どうしても昔漫画から感じた事を思い出しながら見てしまうのですが…

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
当時は悪そうなチンピラが出てきたなーという印象しか無かったのですが、今リメイクされたアニメを見直すと、このチンピラたちも悪さをしたくてしてたワケじゃないんだな…時代の流れに翻弄された一種の被害者でもあるんだなぁ…という感じで、出てくるワルモノをただの悪い奴と思えなくなっていました。

相手側にも行動の理由(ワケ)があります。

そういう深みに当時学生の時はあまり目が行ってなかったな~というのは新鮮な気付きでした。

自分達も就職氷河期の世代ですので、時代に翻弄されてババ引かされて擦れてしまった輩の気持ちも少しは分かります。

るろ剣の深い部分にやっと理解できたように感じます。

1期のストーリーの中ではふとアニオリの部分が入ったりして、内容を知っている人間も楽しめるようになっていました。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
それに先ほど書いたように、敵方の心理描写もきちんと描くことで“絶対懲悪を懲らしめているわけではないんだ。明治を等しく生きている人間達の陰と陽を描いているんだ”という想いを感じます。

単にリメイクするだけでなく、物語に深みを出しているんだなと制作陣の心遣い感じます。

しかしアニオリ部分が全て良かったと感じたわけではないのが難しい所です。

物語の舞台は“るろ剣”でも最も盛り上がった京都編へと移っていきます。
※ちなみに京都編は2期からという区分けになります。

アニオリがどう繋がっていくのかが不透明

物語は2期。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
“るろ剣”エピソードで人気も最高潮だった記憶がある“京都編”へ物語は移ります。
©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
ここでも改変というかアニオリ要素がいくつかあるのですが、ここがどうもしっくりこないのです。

アニオリ部分の内容に関して『京都動乱 製作委員会』にモノ申すつもりは無いのですが、このアニオリを加えた事で原作と比べてさらに物語に厚みが加わっていくのか?盛り上がっていく要素なのかと感じる部分があります。

この機会に当時出番の少なかった10本刀の魅力をもっと出してほしい…とか個人的に感じていた所。

一番気になったのは、京都動乱の志々雄サイドの衛兵達のマインド

それぞれ思う所があって志々雄一派に加わったのだと思いますが、中途半端な覚悟のまま志々雄一派に入った人間もいます。

覚悟を決めずに入隊した人間の存在……。

闘いの現場まで来ておいて“やっぱりやめよう”なんてこと言いだしたら味方全員興ざめします。

もう少し突っ込んで言わせてもらうと、本気で信念持って戦う覚悟の無い人間が戦いの渦中に来ては駄目なんです。

本当の戦争ではありえない事です。

政府側(敵側になります)からしてもこいつはどう処置をすればよいか分からないですし、戦う前から覚悟が出来ていない人間が戦火に居るのはどう考えても不自然に映ります。

そんな半端な気持ちで志々雄一派に与したのかと思うと、冷めてしまいます。

闘いは決して良いものではないですが、お互いの信念と信念のぶつかり合いです。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
それが無い人間は壇上に立ってはいけないです。

そんな気持ちの踏ん切りが出来ていない人間の生末などに盛り上がりは見出せません。

リアルに考えたらとても迷惑で邪魔です。物語に深みを持たせるために、1期のような感じで敵側の心理描写もしっかり描こうとしたのだと思いますが、戦いの最中そんな部分を見せられても困ります。

初見の方だと「戦う覚悟の無い人間が志々雄側にはいるのか…なら勝てるわけないよな~」と感じてしまうのではないでしょうか?

あと、人物の立ち位置、アングル、構図が単調なのでいまいち京都でのぶつかり合いに迫力が出ないのも古参ファンとしてはもどかしく感じる所です。

漫画だと奇抜なアングルや集中線などで躍動感ある京都を描いていたのですが、アニメだと夜というのもあってかなんだか静か~な中で局地戦が行われているような感じの京都大火編……迫力が……無い!と感じているのは自分だけではないはずです。

最終決戦である志々雄との戦闘が始まれば、また派手なアクションを挟みながら盛り上がっていくとが予想できますが、それまでに視聴者を盛り下げてしまってどうするんだという流れになっています。

メインイベントまでに見ているお客さんのボルテージを暖める部分なんだから…ともどかしい気持ちになりました。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
真剣を使った闘い…殺し合いをしているんです。

いまいち緊迫感に欠けるシーンが続いていて、新規の視聴者に“るろ剣”を勧めづらいです。

“るろ剣”のストーリーは京都編の後ももちろん続いていきます。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
しかし今のテンションだと3期4期と続いていくのは厳しいのではないかと。

物語に深みを出すためにアニオリを入れることによる“カメラ”を増やすという手法は登場人物の少ない1期では有効だったのですが、なかなか人間が複雑に絡み合う2期では…苦戦しているように感じます。

20年前、大ヒットコンテンツだった“るろ剣”。当時のファンも健在ですし(当たり前ですが…)ポテンシャルは高い作品なので、古参ファンにも今のファンにも感動を分かち合えるような終着点を目指してほしいです。

この十字傷のエピソードまで続くのだろうか…




声優の難しい所

僕は声優さんではないのであまり偉そうに講釈たれるわけにもいかないですが、アニメ声優の難しさを感じるシーンがいくつかありましたので、シェアさせていただきたいと思います。

それは怒りのシーンでの声の発し方。

メインキャラである剣心や左之助。

作中屈指の人気キャラですし、ファンも沢山います。

しかし彼らの喜怒哀楽で“やっぱりアニメの域なのかなぁ”と感じる所がります。

それが怒った時の声

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
大切な人を守ろうとする時など、人は怒った時怒号を発しますが、2人ともその怒りの声までも“カッコいい”のです。

カッコ良く怒りの声を出しているという感じで、本当に彼は怒っているのかという感覚になる事があります。

真剣を交える場…殺し合いの場です。

そんなカッコイイボイスを通すだけがキャラではないと思います。

ヒロイン的立場である神谷薫さんしかり、人間は本気で泣くときは “うわあああああん”とか“いやああああ” という感じで泣いたりしないです。

男だろうが女だろうが本気で思いの丈を叫ぶからこそ腹の底から“ウオオオオオオオォォ”と声を張り上げて泣くそうです。

コミカルなシーンもある“るろ剣”ですが、殺伐としたシーンではカッコよさよりも緊迫感。生きるためになりふり構わずに声を上げるリアルな“生声”があっても良いかと思います。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
船上など緊迫した場面で追い詰められても追い詰められている感が無い…し、息も切らしていないし鼓動も落ち着いている感じ。

左之助も決して無暗に“技名を叫んでから放つタイプ”じゃなかろうに…

そんな気持ちで見てました。

酷かったのは左之助と佐渡島方治の原作にはない煉獄という船の中での絡み…

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
殺傷能力もない花束でファサファサ叩きながら怒鳴るシーンに何の意味があるのだろうか?この部分本当に和月さんが考えた追加シーンなの?と不思議に感じる部分もあります。

原作漫画がバイブルなだけによけに感じます。盛り下がるようなシーンや入れる事によって後々盛り上がりの伏線に繋がらないであろうシーンを入れないで…と。

尺の調整でもない限りは、もう原作に忠実に作っていった方が良いのではないかと感じるくらいなのですが、皆さんはどう感じましたか?

名作として令和の今でも語り継がれる作品であってほしいのです。明治時代を知るきっかけにもなる作品ですので、もっと盛り上がっていってほしいと切に願います。

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。