感想『鬼滅の刃』思いやりが人を成長させる物語

純粋に強さを求めるのではない新たな少年誌の金字塔

鬼滅の刃」は基本鬼さん達とのバトルが中心ですが、主人公が少し少年誌っぽくないのが特徴です。

「少年ジャンプ」みたいな少年誌だと、色んなジャンルのバトルマンガがてんこ盛りで、その中で主人公は修行を重ねながら強くなっていく流れが主流です。
…ちょっとドラゴンボールの影響受けすぎなんでしょうかね?

主人公(もしくは主人公たち)はどんどんレベルアップを重ね、より強い敵と相見える…という流れに少年たちはワクワクしながら見入っていたと思います。

大人気の「鬼滅の刃」もきっとそういう流れなんだろうと思ってみていたのですが、戦う動機というか強くなるベクトルが少し違います。

大切な家族を守りたいという部分。

ここがこのキャラと作品のカラーを形作っています。

良い意味で“少年誌に出てくるような主人公”ではないです。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
思いと応援してくれる方たちの助けで成長をしていく主人公・竈門炭治郎(かまど たんじろう)君ですが、少し少年誌っぽくない方向の強さを描くのが魅力ではないでしょうか?

今回はもう日本では誰もが知る作品となった『鬼滅の刃』の面白さを紐解いていきます。

まだこの作品を見たことが無い人に関しては、物語を読むのに影響がないくらいのネタバレはあります。

それでも構わなければ、最後までお付き合いいただければ幸いです。

「妹を助けたい」という戦いとは違ったベクトルの物語

まずは基本的な作品の情報をWikipediaより紹介。

鬼滅の刃 

※画像クリックで公式サイトへ移動します
作 者/吾峠呼世晴
監 督/外崎春雄
音 楽/梶浦由記 椎名 豪
キャラクターデザイン/松島 晃
制作プロデューサー/近藤 光
アニメーション制作/ufotable

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

冒頭でも書きましたが、強さを追い求めるのとは違った形で強くなっていく主人公の物語なので、はじめは少年漫画っぽくないなと感じていましたが、強い動機があるから強くなれる姿は好感が持てます。

視聴すれば当然、オープニングムービーが流れますがしょっぱなの歌詞が「強くなれる理由を知った」という言葉。

強さというのは必ずしも暴力的なものではない深いメッセージが込められています。このオープニング曲『紅蓮華』。歌うLiSAさんの声も素晴らしいですが大ヒットしているようで、歌に込められるメッセージに何かを感じた方も多いのではないかと思います。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
ストーリーは1話から大きく動きます。

大正時代ということで、日本昔ばなしのようなノリで見ていたので驚きました。

ただその中で主人公・炭治郎君の人間性はしっかりと描かれます。

「家族を…妹を助けたい!」

それで彼の動機、軸は十分に伝わります。

彼が彼なりの幸せの形へ到達するために、茨を進んでいくのだなという流れと共に物語が動き始めます。

▼常に何かを咥えて登場の禰豆子さん(妹)。伸び縮みする妙な設定アリ。
口が塞がっているためほぼ喋らないので「声優さん楽やな~」という印象。

鬼になってしまった妹の禰豆子を人間に戻すために頑張りまくるお兄さん

絶望を断つ!鬼退治は理不尽の連続

シンプルに言うと、鬼(鬼軍団)との闘いを描いた物語。

鬼を倒すことにより鬼との接点を持つことにより、鬼にされてしまった妹を元に戻す…要するに救う事に繋がるという事で、炭治郎君は鬼退治に身を投じていくわけです。

しかしその「鬼」というのが非常にやっかいで、普通の人間では太刀打ちが出来ないくらいの強さと耐久力を見せつけます。

特に耐久力に関してはちょっと切られたくらいじゃ死なない体ゆえ、普通の人間とはリスクが違います。

人間はダメージを負うというか傷ついたらHP(ヒットポイント)が減っていくのに、鬼は傷ついても夜ならメリメリ再生するのでノーダメージ。

こんなになっても元通りに繋がったり再生します。絶対に人間側が不利です!
そして鬼には強さのランクもあり、上位ランクはもう無双レベル。
十二鬼月と言います

強くなっていく炭治郎君とはいえ、最終的にはこんなのと対峙しないといけないのか…とため息が出るレベルです。

そこで鬼をやっつける専門家ということでの「鬼殺隊(きさつたい)」が結成され、大正という歴史の裏側で暗躍していくわけです。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
炭治郎君も鬼の理不尽な強さを痛感しながら必死にギリギリの戦いを経て鬼殺隊と共に成長していきます。

でも決して強くなって鬼を殺しまくって…そして根絶やしに!…したいわけではないんです。

軸はブレてなく、あくまで「家族を助けたい」というもの。

その気持ちやあり方が目に留まり、鬼殺隊のトップの方たちに一目置かれるようになったり、不思議な縁に助けられたり…と思わぬ方向に好転していきます。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
この物語を通じて感じるテーマ「強さ」の新しい形です。

鬼の散り際が実に印象深い

鬼さん達はグロテスクな形をしたものから、体を自由に折り曲げたり伸ばしたりと変化させるようなものまで様々。

この作品の「鬼」は素人がなんとか出来るレベルではないです。
だからその奇妙な光景に視聴者、特に子ども達は強烈に恐怖を感じるかもしれません。

鬼のデザインは秀逸と言えますが、なかなかおっかない輩ばかりです。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
激闘の末、鬼を葬り去る事に成功し、炭治郎君も視聴者も一安心と言いたい所なのですが、この時の鬼の断末魔がとても印象に残りました。

あまり詳しい説明は、作品を見て頂きたいので省きますが、鬼だった彼らも元は人間なのです。

これだけでも衝撃的ですが、最後に人間だった頃の辛くて寂しかった思い出を…鬼にならざるをえなかった哀しい過去を消え入りそうな声で振り返りながらつぶやきます。

普通だったら「俺を殺そうとしてたヤツが何を言ってんだ!どどめだァ!」みたいな感じで息の根を止めると思うのですが、炭治郎君はやさしく“鬼の最期”を受け止めます。

「手をにぎってほしい」と言えば手を握ります。

最期、すべてを許して穏やかに見送るという感じで、

この辺りが令和の新しいヒーロー像のような感じがします。…時代背景は『大正時代』ですけど。

物語が進む先で炭治郎君と仲間たちは(流れで)鬼に遭遇し、戦闘になってしまいますが、そこでも敗れた鬼たちが最後に生前の記憶を思い出すシーンがあります。

若い世代だとバトルの部分に手に汗握る人が多いと思いますが、自分はこの最後の鬼の生前の振り返りがとても印象に残っています。

人は死ぬときに今までの人生を振り返るはずです。

その時に何を思い、何を後悔して、何をつぶやくのか…そんな視点で見入ってしまいました。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
物語序盤では怖い存在でしかなかった鬼たちにも、鬼と言う浮世離れした生きざまになってしまった哀しい過去があるのです。

物語中盤から後半にかけて敵方を見る目も感じ方も変わってきました。

そういうのも「鬼滅の刃」の作品の魅力なんですかね。…でも相手はどんどんインフレ気味に強い鬼が出てくるので相手の事を気に掛けるようなゆとりは炭治郎君にはありません。

そのうえ恐怖感からやたらと大声でしゃべりたおす鬼殺隊の仲間(?)や、猪のかぶりものした妙なメンバーも加わり、どんどんややこしくなってきます。

だって炭治郎君は長男

長男ゆえに、我慢したり仲間を守るべきと言う責任感があるようです。

長男である自分を省みながら「大正時代の長男像」は何かと大変だな~と痛感。

名前からして説得力抜群「鬼舞辻無惨」

恐らくラスボスになるであろう人物、鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)が物語中盤くらいに出てきます。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
この流れだと“お披露目”みたいな感じでしょうか。

姿は人間ですが、思考の部分。残虐非道さがなかなかエグイので忘れる事は出来ないと思います。

1回出てきたらもう2期が始まるまで忘れられない出で立ちと雰囲気をしています。

こういうキャラの印象付けが抜群に上手いのも鬼滅の刃の魅力かもしれません。

人間を鬼に変えることができる唯一の鬼。そして妹の禰豆子を鬼にして炭治郎君の家族も殺害した張本人。

彼に対して、恨み等のような感情だけではどうにもなりません。

どんな知恵と勇気、そして仲間で討伐へと向かうのか、この時点では想像もつきません。

なぜかというと強いという事は分かるけど、その“強さのタネ・彼を強者たらしめている軸”の部分が全く見えてこないからです。

相手の強さが分からないっていうのは結構恐ろしいものなんだなと感じます。

強そうというのは出で立ちや話し方で感じるのですが、心を読んだり空間を無視した動きを見せたりと強さに訳が分からない部分が多すぎるのです。

作画レベルが映画並みの18~19話

「鬼滅の刃」は日本だけでなく世界中で非常に人気ゆえ、その理由に迫った考察記事が沢山出回っています。

皆さんいろんな方面でこの「鬼滅の刃」の魅力を語っています。

「家族の愛」や「鬼の起原」「“柱”から学ぶ現代のリーダーシップ」など見方は様々です。

Ⓒ吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
それだけこの作品から発せられるメッセージが随所にあるということでしょう。

劇場版の『無限列車編』ではこれからの日本のリーダーの在り方というテーマが詰まった傑作だという感想が多いようです。

でも自分がインパクトに残ったのは、作画レベル

覚えている範囲で、戦闘の描写を含む18~19話辺りがもう神レベルの作画に感じます。

ここまでクオリティの高い作画と、さらに盛り上がりに拍車をかけるような音楽は世界レベルだと断言しても良いのではないでしょうか?

アニメーターさんは勿論、絵を書く仕事全般に携わっている方は、思わずその作画レベルの高さに感動したのではないかと思います。

物語だけでなく作画や演出なども制作者の凄まじいプロ意識を感じます。

アニメーション制作会社「ufotable」は強烈な爪痕を世間に残したのではないかと感じます。

…と思ってたら、最後の方のとあるキャラの作画が妙に雑だったりして、その部分も変に印象に残りました。

以下そのシーンの説明を書いておきます。分かる人はどこかすぐに気づくと思います。

【少しネタバレです】炭治郎君がとある呼吸法の習得が上手くできてない時に、布団たたきみたいなので炭治郎君をバンバン叩く女の子たちがいるのですが、その女の子たちの作画がまるでネットの無料素材サイト『いらすとや』から拾ってきたような感じ
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作画や演出など高いクオリティも話題に挙がった「鬼滅の刃

第一期が「立志編」ということで、物語ではまだ序盤ということなんですよね。

これからますます熱い展開になると確信がある「鬼滅の刃」を楽しんでいけたらと思います。

これからは団体戦になっていく様相を感じます
こういったレビューを書いていますが、アニメはまだまだ初心者なので、「鬼滅の刃」に詳しい方たちとSNS等を通じて交流していきたいです。

今後の展開、非常に楽しみです。

2020年頃からはゲーセンなどのクレーンゲーム(UFOキャッチャーとも言う)は鬼滅の刃一色になりました。

幅広い層に人気があるのが伺えます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

▼「鬼滅の刃」遊郭編PV