感想『CLANNAD』視聴者を黙らせる作品。後半から無口になった

この作品を見るまでのいきさつ

レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。

周作twitter:DarvishShu)です。

今回は「CLANNAD(クラナドと読みます)」という作品のレビューを紹介します。

この作品は2000年初頭にゲームからアニメ公開され、ゲーム自体も色んなコンシューマーに移植されている不滅の名作という折り紙がついています。

よく「クラナドは人生」とかいうキャッチを聞きますが、たかがアニメなんかに大げさな…なんて感じていました。

すいませんがまず、そんな風にアニメを敬遠していた自分がこの作品を見るまでのいきさつを簡単に紹介させて下さい。少しお付き合い願います。


2010年代。自分自身この作品の存在は知りませんでした。当時の自分はアニメ自体見ていなかったし(ジブリ映画は見ましたが)仕事が忙しくてゲームをする時間も殆ど無かったためサブカルチャーと言われるものはスルーしていました。

しかし、2019年にAbemaTVにて偶然見たアニメ作品をきっかけに、日本のアニメのレベルの高さに驚き、そこから時間を作ってはアニメ作品を視聴するようになりました。

いつの間に日本のアニメの水準はこんなに高くなっていたのか…と感動する日々。

そんな中、アニメに詳しい友人が出来たので、その方に「どんな作品がお勧めか?」「どのあたりから日本のアニメはこんなにレベルが高くなったんだ?明らかに作画も作り方も自分が知っていた頃のものと違う。日本のアニメを世界に発信しだしたルーツを知りたい」と質問攻めしたのですが、そこでその友人は「クラナドを見ろ。まずはそれからかな。」とだけ返信。

家に戻って早速「CLANNAD」で検索をかけたら、キービジュアルが出てきました。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
その時の自分は「こんなギャルゲーみたいな作品がそんなにアニメ界を揺さぶるほどの出来なのか?」と半信半疑でした。

知らない人が見れば分かりますが、(その時代特有のものなのか分かりませんが)作画があまり良いとは言えなかった…言い方悪いですが、美少女キャラが好みの男性層にしかウケないような感じの作品としか感じられなかった…

今思えば偏見だと感じます。

でも2019年当時の自分は画像検索するだけで、どっかでDVDレンタルして視聴…まで踏み切れませんでした。

そこから年月が経ち、2025年。ありがたいことにAbemaTVさんがクラナドを全話放送してくれることになりました。あの時言われたことを思い出して視聴してみることに。

自分がアニメを見るきっかけにもなったAbemaTVさんには本当に感謝しかないです。

海外でも視聴できるなら言うことないんですけどね。(※画像はタイより)

純粋に物語を楽しみたいけど

スマホなどを全部切って、一気見しました。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
1期と2期合わせて実に9時間以上。朝から見始めて休憩を入れながら見てましたが日が暮れました。その後、今まで視聴した方々の感想などをネットで読んでいたら最終的に夜中になりました。

少しネタバレになりますが、クラナドは人生と言われるだけあって、人生を生きるために必要な金言がちりばめられていたので、これから視聴される方に支障ないようにレビューを書きます。

主人公は色々あって不登校しがちな高校生の男の子。

モブの女性陣が「不良」という言い方をしている所から時代を感じます。

スポーツ推薦で学校に入ってきたのに肩の故障でうまくいかなくなり、次第にふさぎ込んでいきます。彼の見えている景色は灰色。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
そんな自分の景色に色をつけてくれたのがヒロインとの出会い。
©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
なるほど…ギャルゲーみたいだ…と、初めはやや斜に構えながら視聴していました。

魅力的な女性キャラはほかにも沢山出てきますが、初めの方はその“デカ過ぎる目”が特徴のキャラデザや、頭から2~3本昆虫の触覚みたいに出てきている髪の毛がやたらと目立っていてあまり集中して物語に入っていけなかった。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
感動的な話はありますが、女性キャラの中には「流石にこんなしゃべり方の子はいね~よ」みたいな感じの冷めた目で見ていたところがあります。良作だなと感じてはいましたが、俺が歳取ったからなんだろうか…

でも昔のアニメに詳しい友人が「まずクラナドを見ろ」とRPGに出てくるセリフみたいに繰り返し言ってた事を思い出して視聴を続けていました。

今作品のヒロインである古川さんはとてもやさしい子なのですが、そのあまりにも優しすぎる振る舞いから、こんな子3次元の現実世界に果たしているんだろうか…(目の大きさは別として)という思いがよぎったりして感情輸入できなかったのも事実です。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
思い通りにいかず、留年を繰り返していたら少しは自暴自棄な感情が芽生えてもおかしくないのに、…最大の理解者である家族の存在は大きいけど、こんなおだやかで居られない時もあるだろうに…

菩薩様みたいだな…この子は…。まあ素敵な物語ではあるけどまぁこれはフィクション。

最終的にハッピーエンドに進めばよいなという感じで1期は幕を閉じます。

ここまではやや斜に構えて視聴していました。コメディ要素も強かったので2期もラブコメみたいな感じで続いていくんだろうなと。

でも1期で回収されていない問題があったのは盲点でした。あまり関係ないだろう…と感じていた人物との葛藤など2期になってから一気に展開が変わってきます。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部




後半から無口になった


コメディ強めの、感動もいれつつ学園生活が続くアニメだと予想していましたが、この作品はそこで終わってしまうようなものではありませんでした。

普通という定義も怪しいのですが、大体のラブコメは思いを寄せる相手と出会い、ライバルだったりアクシデントだったりといろんな障害を経ながら最後は両想いで結ばれてハッピーエンドになって終わり!というのがセオリーではないかと感じます。

この終わり方は、昔の童話でも例外はそんなにないです。

“お姫様は城で王子様と結婚し、幸せに暮らしましたとさ。めでたし×2”みたいなのを何度も聞いたように感じます。

それで言うと、自分の予想では2期の内容は「留年とかいろいろあったけどやっと卒業してその後結婚して幸せに暮らしましたとさ」みたいなハッピーエンドを予想していました。コメディも入れつつ引き伸ばしながら。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
でもその通りにならなかったのがこの作品の名作と呼ばれるゆえんです。ここによく踏み込んだなという印象です。それにもし自分の予想している終わり方と似通っていたら、物語としては良くても10年を過ぎた今でも名作と言われる程にはなっていないはずです。

というのも、結婚したら人生のゴールではないのです。ここは死ぬほど大事。

結ばれて両想いになって………そこからです。人生は。

2期のタイトルの中で意味深なのがあります。『9話 坂道の途中』

主人公の朋也君は卒業した後、どうなるのか…そこまであまり考えていませんでした。当たり前ですが社会人生活が始まります。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
でも高卒の彼は仕事に苦労します。家でも疲れてご飯も手を付けられないくらいに。この辺の描写が妙にリアルで、2期の前半の高校卒業くらいまではコメディ色強かったけど、急に現実を突きつけられるような世界に突入します。

CLANNADが当時放送されていた時代(2007年くらい)、自分は社会人で仕事で理不尽な思いをしながらも必死で働いていました。だからあの頃の自分がこのアニメを見てたらまた感じ方が違っていたかもしれません。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
とにかく社会人になって二人の将来のために必死にもがく朋也君の姿が年齢こそ違えど妙に刺さり、その辺りから無口で一気に物語の中に没入していった感があります。滅茶苦茶リアルに感じて、今までの変なコメディ要素とかはいったい何だったんだという風に感じます。

物語の背景を分かりやすく伝えて最後まで視聴してもらうためとはいえ1期はまるまるチュートリアルみたいな感じがしました。ほのぼのしていた展開から一気に空気が変わります。

もうキャラデザがどうとかいう部分は吹き飛び、彼をなんとか応援したいというかなんとか幸せな結末に向けてがんばってほしいという思いでいっぱいになりました。

社会は厳しく、突きつけられる現実は無常。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
どうしようもないことがある。

それを受け止められずにやりきれない思いを発散したりする部分など、とてもリアルで視聴者を黙らせてしまいます。

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
朋也君の家庭環境にもつっかえているものがあり、心情的にきついのがよく分かります。

そこを自分の子どもからのメッセージだったり自分の気づきと共に向き合えるようになる…許してまた歩み続ける姿などは、視聴者の心を揺さぶり勇気をくれます。

もし彼と同じような状況の方が居て、この作品を見たらどれだけ心が救われるのかというのを考えてしまいます。

これは直で刺さる人には涙なしでは見れないような展開だと感じた18話辺…。     

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部
この作品がどれだけ沢山の人の心に震えるほどの勇気を与えたのかというのがやっと分かってきました。

でもこの作品は、そんな感動の渦に巻き込まれた人の想いも振り切ってさらに加速していきます。後半はもう時間も忘れて見入っていました。

本当に2期の途中からの展開がすさまじくて、よくこんな作品を作ったなと感心します。1期の内容からは想像できないような展開が待ち構えていました。





受けとったメッセージ

この物語のラストへのヒントと言えるメッセージは、会話の中にちょこちょこ出てきます。これはしっかり視聴していないと見落とすレベル。

「命」が何と連動しているかとか、オープニングに頻繁に出てくるロボットと少女がとった行動の意味など細かい設定などは後でサイトなどで答え合わせをして確認していきましたが、最後に自分自身が受けとったメッセージをシェアさせていただきます。

それは「幸せになるためには、幸せな人が増えること」「誰かを幸せにしていけば自分も幸せになる」ということかと感じました。

1期から2期を通して、誰かの幸せのために行動してきた彼らの行いが幸せな結末に結び付いていくのです。

今の社会、どうですか?

幸せな社会にするためには、幸せな人を増やせばいい。

大事な事、当たり前のことだけど、言葉遊びみたいで皆さん本気でこの意味を受け止めようとしない。だから作品を通してこのテーマを伝えようとしたのではないかと思います。

みんながみんなを不幸にしあう悪意のぶつけあいでは社会がおかしくなります。“この町”が嫌いになってしまいます。

余談ですが、「俺の嫁」って有名なスラングがあると思います。あれってこの作品がきっかけで出来た言葉なのでしょうか?結構昔からあった言葉に思えるのですが、CLANNADが発祥なのか?それとも別の作品なのか?少し気になるところです。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。