映画「大統領の理髪師」不思議と印象に残った親子愛の物語

政治の風刺など切り込み方が秀逸な作品

かなり前の映画になりますが、今でもとても印象深く心に残っている作品があるので紹介させていただきます。

レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。

周作twitter:DarvishShu)です。

今回はただ「面白かった」というのではなく、心に残るストーリーがあるので紹介させていただきます。

「大統領の理髪師」という映画で韓国で撮影された作品です。

『大統領の理髪師』(だいとうりょうのりはつし)The President’s Barber
原題:효자동 이발사)
2004年公開の韓国映画。

監督/イム・チャンサン
脚本/イム・チャンサン
出演者/ソン・ガンホ、ムン・ソリ
舞台は1960年代から1970年代の韓国
韓国の政治の激変期であり、暗い空気が漂っていた時代を扱っているが、コミカルに仕上げられ、また家族愛が感動的に描かれており重々しさを感じさせない。とはいっても当時の韓国の世相を十分に表現しており、現代とは違う、韓国の独特の雰囲気を味うことができる作品の一つ。

大統領官邸が位置する町、孝子洞の平凡な理髪師であったソン・ハンモ。しかしある事件をきっかけに大統領の理髪師になってしまう。必然的に大統領の身近にいる彼も、否応無しに政府の権力抗争に巻き込まれていく…

コミカルな内容ですが、政治の風刺などを分かりやすくもリアルに描写していて、韓国の歴史の一面を学べます。

知らない人も多いと思う今回の作品。最後までレビューにお付き合いいただければ幸いです。

▼韓国語ではありますがPVがあります。

※映画は日本語訳ありますのでレンタルなどでどうぞ!

感情輸入すれば非常にシリアス!一緒に時代を生き抜こう

身分制度の激しい世界であなたは、大統領閣下の村の理髪師をしています。

そんなある日、普通に仕事していたあなたは急に閣下の配下の方に呼ばれ、閣下の理髪を任されることになりました。

どう感じますか?

「出世したなー」とか感じますか?

でも理髪中、実際にあり得る話で、ふと力が入りすぎてカミソリで閣下の首筋に傷をつけてしまったら…

バレたら殺されるかもしれません。

体中の血が逆流するくらい焦るでしょう。

そんなチキンハートな主人公の気持ちに寄り添って見ていくと、面白いというか非常にシリアス感満載になっています。

自分よりもはるかに身分の高い人間と、理髪師という形で接することになりますが、何しろ世界観が違いすぎます。

江戸時代で言うと、大御所様と町民くらいの差があるわけで、「価値観」が違いすぎます。

そんな自分のモノサシではとても計れないような世界に放り出されたとき、人はどう対処するのかを疑似体験できます。

映画を見たのがもう15年以上前なのに、未だに印象に残っているのは、振り返れば主人公の立場に立って見ることで普通の人生では感じられない体験ができたからだと思います。

コミカルなはずなのにドキドキ(恐怖の方)が一緒に味わえるのはまれな映画です。

なりふり構わず家族を守る父親の姿

この物語のナレーションは主人公の理髪店の店主、の子ども「ナガン君」。

なので、ナガン君の目線で話は進んでいきます。

途中政府の権力抗争の飛び火で、町民にスパイ疑惑が広がり、スパイ疑惑がある人はお腹が弱いといううわさも一緒に出回ります。

タイミングが悪かったとはいえ、その時に偶然下痢気味だったナガン君は何の罪もないのに、スパイ疑惑で牢獄へ収容されてしまいます。

だからと言って父親は身分のまるで違う閣下へ「うちの息子を返してください!」と言い寄る事なんて出来ません。

農民が殿様に怒鳴り込むようなものです。

身分が違うので、正攻法でいくと殺されます。

でも愛する大切な子どもを助けたい店主は、様々な知恵を振りしぼってなんとかしようとします。

その姿が必至で…でも良い方向に向かわず、彼なりに一生懸命がんばっているのに報われなくて自暴自棄になる様は、時代に翻弄されつつも、必死でもがく現代社会を生きる僕たちに重なる部分があり、胸が締め付けられる思いがします。

自分ではどうすることもできない大きな壁を前に、引けず、進めずの自分はどんなに情けなく感じたことでしょう。

それでも作品を通して、この理髪師の店長は立派な父親だなと感じるのがこの映画のポイントです。

彼は決して特別な力がある訳でもないのですが、現実から決して逃げませんでした

その姿を見るだけでもこの映画を見る価値はあります。

政府の権力抗争で激動とも言える社会に巻き込まれながらも、必死に家族を守ろうとする姿には本当に感動します。

歴史背景も知れるし、構成は抜群!全年齢お勧め

家族を守り不格好でも必死に生きる主人公をコミカルながら感動的に描いたこの作品は、全年齢の方に見てほしいです。

韓国の歴史も知ることが出来るし、物語の構成という面でも非常によくまとまっています。

何よりも15年以上経ってもまだ内容を覚えているというのが、非常にインパクトと心を強く揺さぶってくれた映画という証拠です。

この映画を見た後、俳優のソン・ガンホさんは勿論、韓国の事を少し学んでみたいなと感じました。

どこの世界でも家族思いの立派なお父さんはいてるんです。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


ソン・ガンホ 「大統領の理髪師」を語る


お勧めの映画ですのでレンタルしてみてください。