激動の有馬温泉街を舞台にした地域復活劇


激動の有馬温泉街の地域おこし


レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。

周作twitter:DarvishShu)です。


地域マーケティングを主に活動されている
流通戦略研究所 上野 祐子さんの話を紹介します。



今回のテーマはなにやら難しそうに感じるかもしれませんが、プチドキュメンタリーみたいなカンジで、


地域再生の一つのヒントとして書いてみたので、お付き合い頂ければ幸いです。


町が変わっていく姿、過疎化していた街が変わっていく過程&狭間を話していただきました。


話してくれた方は「流通戦略研究所」という肩書を持つ 上野 祐子さんという方。

上野 祐子

一つの話として楽しめるし、とても分かりやすかったので、皆さんにもシェアしたいと思います。


決して難しい話ではないので………よろしく!

廃れていた有馬温泉街の問題点と向き合うところから

話の舞台は西日本では有名な観光地、有馬温泉とその温泉街。

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まずは数年前、過疎化が激しくなっていた兵庫の有馬温泉街。


有馬温泉というと皆さん関西地方の温泉のメッカ、観光の街ということで有名な場所ですのでご存じだと思います。


僕もかなり前ですが温泉旅館に立ち寄ったことはありますが、めちゃくちゃ観光地化されていて旅館やホテルがこれでもかと立ち並んでいました。


まぁ関東の方だと熱海の温泉街をイメージしていただけると分かりやすいと思います。


しかし7~8年ほど前は本当にお客が来ない赤字どん底の街になっていたそうなんです。


コレ、知ってましたか?


ほとんどの旅館やホテルが大の赤字続きだったなんて。


パンフレットは今も昔も充実していますし、戦国時代の武将が好んで利用していたくらい歴史ある場所だったわけです。


僕は、オフシーズンや年末年始の時期になれば都市部や中部方面から社員旅行や慰安旅行でめちゃくちゃ盛り上がるんだろうな~とか勝手に想像していました。


…ですが、それはもうかなり過去の話だったようです。


うまくいってなかった頃の有馬温泉施設というのはどんなのだったかというと…
(うまくいってなかったとはいえ全部がそうというわけではないです)




まず温泉旅館が旅館組合みたいなのを作って、それに加盟しない業者さんや近隣の小売店などはのけ者にしていたそうです。


そして社員旅行や慰安旅行、観光で来たお客さんを旅館に「囲い込み」をかけていたそうです。


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一つのマーケティング戦略とも言えるこの「囲い込み」


どういうことかというと、温泉と宿泊、そして食事だけでなく温泉旅館の中にバーを入れたり、カラオケ、テニスコート、プール、ゴルフ場等を入れたりして、一つのコースにしてホテルの中だけで全て賄わせてしまうというもの。


お土産コーナーも含め、お客さんを旅館内で全部お金を落とさせるようにしたのです。


そうしたらお客は近所の飲み屋や小売店に足を運べないわけです。


まるでホテル(旅館)の中に監禁状態にされたみたいになってしまいます。

…ちょっと言い方悪いですけどね。


施設の中はなんでも揃えているとはいえ、割高で種類も少なく、お土産も炭酸饅頭ばかりで工夫もない。


そうなれば、どんなに名所であれ次第にリピーターが減ります。


関西随一の温泉施設であっても不評が広まればお客が全くと言っていいほど来なくなります。


有馬ブランドとはいえ一度崩壊してしまえばそうお客さんは戻ってきてくれません。


旅館組合に加盟している温泉施設の社長さんたちは来る日も会議をしては、どうすればお客が来てくれるだろうかと議論するばかりで、打開策はまるでなし。


ゴルフや旅館のイベントに著名人を招いたり、TV取材を入れたりしても、一時しのぎになってしまい、またすぐにお客が来なくなり、閑古鳥が鳴いている旅館が増えていたそうです。


温泉施設以外の店に行けないので、周りの飲み屋などのお店にお金を落とすこともないため、周りの店もすたれて潰れているありさま。


駅から旅館までの道が、とにかくシャッター街になっていた時期もありました。


都心に近いからほっておいてもお客は来るだろう…とか考えていたので、驚きましたが、本当にある時期を境に社員旅行や家族旅行がぱったりなくなってしまったことがあったそうです。


そんな状態で、協会のお偉いさん方がウンウン唸っていた時に「このままじゃヤバいから、だれか観光指導してくれ!」という事で会議に呼ばれたのが、今回この話ををしてくれた上野さんというわけです。

その上野さんを交えての旅館組合との話がとても印象的でした。

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解決の糸口は自分達の中の驕りではないか?

とりあえずここまで説明分かりましたか?

なんだかずいぶん前置きが長くなってしまいましたが…(汗)…続けます。


上野さんは旅館の重役さんたちに提案します。

「あなたたちが悩んでいるのはまず何か?悩みの正体は?」

『どうしたらまた昔のようにお客をうちの旅館に囲い込めるようになるのか?どんな施設を入れたらお客に振り向いてもらえるか?』

「あなたたちは旅館を盛り上げようと思っているみたいだけど、旅館までの道のりはシャッター続きのさびしい街になってる。駅までの道のり盛り上がってないと結果旅館も盛り上がらない
そこのところはわかりますか?」


『わかる。だからこうやってみんなで会議をして打開策を練っている』

「ならなんでこの会議に一般のお店の方たちが参加できないの?」

『それは旅館組合でないから…』

「その旅館組合でないとこういう街を活性化するための会議には参加できないの?」

『…いや、そういうわけではない。』

「じゃあこの旅館組合というのは何なの。もっと町のお店の方たちに協力してもらえばいいじゃない」

『それはうちらが作った組織であって、はっきりした決まりごとは…無い』

「じゃあ今すぐ、地域のお店に協力してもらって町ぐるみのマップを作ったりしてとにかくお客さんに選択肢をあげないとマネジメントもなにもないよ。」

『でも彼らは旅館組合ではない』

「だからその”組合”はなんなの?組合の人でないと地域づくりは出来ないの?あなたたちが勝手に作っている枠をまず取り外さないと、話が始まらないよ!」



…ここになかなか旅館組合の人が納得しないんです。


おそらく自分たちの旅館にお客を囲い込みできなくなるというのを分かっているから。


今まで数ひしめいてきた旅館がそれぞれお客の取り合いをしていたのですから、他へ行かせることに対して懸念してたんでしょう。


本当はいろんなお店、旅館以外の飲み屋とか居酒屋に行ってみたりとバリエーションを増やせばお客も面白そうだと感じて戻ってくるかもしれない。


でも組合に入ってない人間の力を借りるのは老舗や高い資金を投入して設立した旅館のプライドがなんとなく納得しない。


自分よりの弱い店の力を借りる、自分たち組合以外のところでお金を落とされるのがしゃくにさわるのでしょう。


上野さんはここの説得にそうとう時間かかったようです。

見ている視点を広げ、固執している部分を認める

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言うまでもなく、組合の枠をはずしてから、地域のお店と協力して、地域全体を盛り上げようとする動きが形になってから、お客は少しづつ戻ってきました。


もともと交通ルートも整備されているし、取材などはすぐに入ることができます。有馬温泉全体が変わった…そういう情報を聞いた近辺の方たちが少しづつ有馬温泉に戻ってきました。


旅館以外のお店も繁盛し始めて、小売店やお土産店も繁盛し始めました。


旅館の中の変わらないお土産品とは違い、小売店は常に知恵を絞ってきたので、売り方も上手です。メニューだってバリエーションあります。


そりゃあ旅館内のお土産の売り上げ場減りましたが、有馬温泉街にやってくるお客は増えてきたのです。


そして、今では温泉の観光地として昔のように繁盛し始めました。


見ている部分、固執している所によって、解決策が見えなくなっている場合が沢山あります。


有馬温泉の事例は実に効果が分かりやすく出たのではないかと思います。


「うちの旅館は歴史ある~だから、そんな簡単に外部のモノを…」とか言っても全く改善しません。


囲い込みをして、独占しようとせず、逆に回りの人と協力すれば、助けてもらえば解決するような簡単な事すらできなくなっているのは、今の状況だけ見て視野がいつの間にか狭くなっているのではないか?


経営者やそうでない方も常にそこのところを見つめなおす必要があります。

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話をしてくれた上野さんは最後に

「地域の人たちはその中にずっといると、良さが見えなくなって分からなくなってしまう事が多い。

共感と接してもらう街作りが大事だということすら見えなくなってしまう。

『地域が活性化している状態ってどんな状態?」と聞いてもすぐに答えられなくなってしまうくらい…。

だから外部の人の目を持って見てもらうのも大事。

…現地の人が受け入れるかどうかは置いといて」
としめくくっていただきました。


今回の事例以外にも、地域マネジメントと活性化につながる素敵なアイディアを色々学んできたので、分かりやすく伝えられるようになったらまたブログでシェアしたいと思います。


▼有馬温泉街のページはこちらを参考に見てみて下さいませ。


長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。