感想「違国日記」こういう作品が評価されるのは嬉しい

物語を咀嚼する余地を残してくれている神バランス

この度は閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

最近はタイパやコスパが声高に叫ばれ、手っ取り早くスッキリしたい…言い換えるなら“サッとドーパミンを放出して気持ちよくなりたい”というような意見が多く、それらの願望を叶えるようなエンタメが増えています。

ショート動画がその最たるものでしょうか…

特に小説など本が読まれなくなったと言われていますが、その理由は結論やゴールへ到達するまでの過程、“間”がノイズだと感じるからだと言われています。

昔の文芸を嗜むという感じの意識が随分変わってしまったように感じます。

和歌や俳句はその文脈の“間”に触れるのが奥深くて楽しいのですが、それをノイズだと感じるようになったら一切楽しめなくなります。

アニメを倍速視聴する人がいますが、自分はそれはなんだか納得できない派でした。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
アニメやドラマにも独特の“間”があります。

散らすようなピアノのBGM、無機質な景観を入れたりして独特の間を入れるのも作品の魅力です。

そこから何かを感じ取るというカタチの楽しみ方が少なくなったように感じていた昨今(自分の主観かもしれません)ふと始まった作品…

その名も「異国日記」

既に実写化されている作品だったので、ある程度の支持を得ているというのは知っていましたが、アニメならではの作り方が良かったのでレビューを書かせていただきます。

実写の良さアニメの良さ…この辺は深く突き詰めていきたいですね。

▼まず予告動画が非常に上手く作られていると感じました。





他人の矛盾にも寛容に

物語は人間同士が織りなすドラマですが、主軸は2人。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
人付き合いが苦手で、小説家を生業にしているアラフォーっぽい女性・槙生(まきお)さん。
まきおさんの私生活はこれで大体理解できます。
そして彼女の姉の娘である朝(あさ)。物語序盤では卒業を間近に控えた中3。
寝ながらスマホはお勧めしないですよ。注意しようよ!
事故で朝は両親を失う事になり、後見人となってくれた槙生さんとの2人暮らしを描いた物語になります。

ぎこちない共同生活と言った方がいいでしょう。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
この物語を視聴していてまず感じたのが(自分の主観ではありますが)意味をあまりなさないけどなんか考えてしまうようなありふれた会話が結構あるということ。

アニメなどでよくある“伏線”とは違った日常の会話です。

これはアニメの種類によっては意味なしトークと見られてカットされることもあるシーン。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
タイパやコスパを考えたらもっとシーンをカットして主要な部分だけを取りまとめて、2時間くらいの映画尺にして放送するという手法もあります。

でもこの作品は何でもない日常のやりとり…“間”をとても大事にしながら作られていました。

「結局この作品を通して何が言いたかったの?早く結論を教えてよ!」とか言われたらそれなりの回答は提示できます。

でもキャラのセリフにリアル感や人間味が出ていて、そこを味わいながら視聴した方が楽しめます。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
楽しむために見てるんです。

いつの間にノイズと認識したらすぐにカットするような感情が芽生えてしまったのでしょうか…

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会

例えば、序盤の槙生さんのセリフ…
「悲しくなる時が来たら、その時悲しめばいい…」

このセリフだけでも咀嚼するまでちょっと時間がかかります。

だからってアニメを一時停止して考えるというのも違うのですが、そこから次のシーンに移る間などに、ゆっくりした感じを主線に置きながらやや散らした感じのピアノBGMを入れるなどバランスを取っています。

とにかくセリフに対して即座に意味を求めなくてもいい。

言葉を味わいながら見ていってほしい…という感覚でしょうか?

自分はそう受け取れました。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
槙生さんのセリフを味わいながら、彼女が何を考えてこの言葉をチョイスしたかを考えてみるのです。

小説家だけあってセリフが独特なのです。そしてそれを瞬時に理解しなくてもいいんです。

実際、朝も「何言ってんのか分かんない!」と素直な気持ちをぶつけます。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
彼女がまだ幼くて理解が浅いからとかではなく、すぐに分かんなくてもいいんです。

物語を通して彼女がどんな人なのかを各々が感じ取っていけばいいんです。

2人の共同生活を始めるにあたって、朝に日記を書くことを勧めます。自分の今の気持ちをきちんと整理するための”ジャーナリング”みたいなものかな?
視聴していく中でだんだん「このセリフ、槙生さんらしい言い方だな~」なんて感じるようになってくるから不思議です。

誠実なのは分かるのですが不器用さがにじみ出ている槙生さん。でも人の魅力というのはそういう部分からにじみ出るものです。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
他人の矛盾にも寛容になれるにはこういう対話も必要だと感じます。

“たらいまわし”はナシです。

言葉のチョイスがいちいちカッコいい

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
説明し過ぎないセリフ。

でもモノローグみたいな形での説明シーンはない。

物語の伏線みたいな含みはないけど心に残るふとした会話。

3話くらいまで視聴したところで、ようやくこの作品の歩調に合わせて見れるようになってきた感覚がしました。

自分だけかもしれませんが、コスパの良い作品に慣れ過ぎていたようです。

しかしよく考えれば、日常にコスパ良い会話なんてない…ほとんどが意味をなさない会話だったりします。

無駄をそぎ落としたものが良いと感じていたのに、実は現実離れしていたのではないかと感じます。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
他に感じた事として…
槙生さんのセリフから妙に共感したのですが、人付き合いが苦手なのが何も人に対して無関心なわけではないということ。

ここは説明するよりもアニメを視聴して感じ取ってもらいたいです。

冷たそうに見えるのと相手を尊重していないのも違う。

ここもタイパよいショート動画ではとてもサクッと表現しきれないシーンです。何気ない会話のやりとりやお互いの関係性から感じとるものです。

そしてその感じ取ったものが正解でなくても大丈夫なのです。

考察動画とか見て、分かった気になるのが一番もったいないというか…

まぁ彼女、言い方に癖があるので実際分かりにくいのですけどね。

槙生さんは朝に対して寄り過ぎない距離感というものを持っていますが、それは相手を尊重しているからこそ出来る事。パーソナルスペースをとても大事にしています。

そういうのに気づいたのも結構後の方です。

自分も初めの方は理解度が弱くて、言っている意味がいまいち分かりませんでした。なんでこういう返し方をするんだろうってよく分からない所もありました。

でもその気持ちを抱いたまま、いちいち考察動画に走らずに彼女達の日常を味わっていっても良いのではないでしょうか。そうすれば朝の気持ちも少しは分かるんではないかと。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
レビューを書いていて、他の作品とは一線を画(かく)しているなと感じます。

展開がどんどん進むアニメはどうしてもベルトコンベアーみたいな感覚…見方が受動的(受け身)になりがちですが、この作品は主体的に見れる。

そして見る人の数だけ色んな事が感じられる…

世代によっても違った感じ方ができる…

アートみたいですね。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会

この歌は覚えていたい

レビューはあくまで自分が感じた事であって、視聴していく中で感じる所や気づく事はきっと違うと思います。

女性か男性か、若年か高齢の方かなどで感じ取るものも違ってくると思います。

だからこそこの作品を視聴し終わった後、己が汲み取ったものを世代間で話をして分かち合ってみるのはどうでしょうか?

オープニングの曲がこの物語のキーにもなっていますが、とてもやさしいメロディで心に染み入ります。

是非映像と共に味わってみて下さい。

生きづらい世の中が作品を通してふと優しく見えたら、製作陣も苦労して製作したかいがあったというものです。

©ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。