感想『来世は他人がいい』覚悟の無い奴は隅っこで笑う資格なし

タイトルのお気持ち、お察しします

あなたは非日常には興味ありますか?

しかしそれはほんの少し垣間見るだけなら問題ないのですが、その世界にまるまる首を突っ込んでしまえば人生エライ事になります。

興味半分で人の世界をのぞき見しようとしない事が大事です。

レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

今回やたらとキャラにインパクトが残った作品があったので紹介させていただきます。

タイトルは『来世は他人がいい』


このタイトルを見ただけでも、この常葉を発しているであろう人間の気持ちが伝わります。

日本最大の暴力団の世界で織りなすドラマがこの作品の舞台になっています。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
そして主人公は当然そんな世界に本人の意向も関係なく放り込まれた人間。

そんな今回の主人公は女子高生の“染井吉乃”。吉乃さん。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
しかし彼女はある時を境に腹をくくり、なかなか肝っ玉が据わっていて引く位強引な所を見せていきます。

それが一周回ってカッコよく見えてくるから不思議。

縁談という組ならではの流れでとある男の居る組へ転がり込むことになります。

そしてその男性も爽やかで人当たりのよい、ヤクザの家系を思わせない好青年なのだがとんでもない奇人だったりする。

何が言いたいかというと、ものすごく濃い人間のせめぎ合いになっているので、物語全体から殺伐感がするのです。

何気ないセリフの内に隠されている狂気というものを読み取りながら見ていくことが出来たら、この作品のレベルの高さが分かってきます。

少女漫画特有の細かな心情表現とかいうのではなく、もっとエグイ感じ。

ここらへんの匙加減はアニメを実際に見てもらわないと分からない部分ですので、見るならじっくり腰据えて本気で見てみて下さい。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
吉乃さんと縁談相手の深山霧島君やとりまきの男性だけでなく、その取り巻きや女友達までとにかく肝が据わっています。

会話の内容が相手を気持ちを逆なでしつつもさらに追い詰めたようなニュアンスだったりと、どいつもこいつも気が強すぎて、平民というかただの優男だとあっという間に言葉だけで蹂躙されそうです。

会話という刃物で刺し合いをしているような感覚になります。

暴力団関係の付き合いの中の話の為、暴力的なシーンは想像していたのですが、どちらかというよりも言葉での斬り合いみたいな感じが多かった。

京都弁って舞妓さんみたいなやさしいイメージを醸し出すものだと感じていたのですが、言葉のチョイスによっては相手の心情をえぐるような言い方もできます。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
言葉の裏に、したたかさや覚悟…“絶対承知せえへんからなぁワレェ”みたいなメッセージが聞こえてきて、会話が一つの戦いになっています。

この辺の言葉のやりとりなどは秀逸です。

そう言う部分ではこの作品は唯一無二です。半端な奴は舞台にすら出てきません。





受け入れて腹をくくるということ

生活を共にするため大阪から東京へ引っ越すことになる吉乃さんなのだが早々からショッキングな事の連続。

ここでうろたえて陰で大人しくしているか、覚悟を決めて中に入り込んでいくかで、その後の彼女の人生も変わっていきますが、彼女は後者をとります。

その覚悟を決めたような命を削る行動と宣言に縁談相手の霧島君は“やっと理想の相手と巡り会えた”と好意をむき出しにしてきます。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
でも彼はどこかがおかしい。

何か頭のネジが飛んでいる感じがします。

ここで女の人がいたら問うてみたい質問なのですが、理想の彼氏ってどんな人ですか?

“やさしくって、長身で、イケメンで、包容力もあぅて…”

一見霧島君もそんな感じです。

だから学校では人気者。モテます。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
でも裏では彼女を束縛したいあまりGPS使って位置を特定させたり、好きな人ができたら自分の目の前で“行為”をしてほしい。その後相手の男をぶち殺すーみたいな狂った言動や考え方をしていて…こちらもかなり濃いというか突き出た部分があります。

本性を知らない人間はキャーキャー言いますが、知っている人間からしたらストーカーの変人以外何者でもないような人物。しかも歪んだ愛し方しか出来ないときている。

もう来世は他人でいいですよね。

怖いを通り越してなんだか別の感情が芽生えだしている吉乃さん。でも一緒に彼女を追っていくとその気持ちも分ります。

コイツは一度自分の常識をとっぱらったうえで、全てを受け止めた上で接していかないと自分が保てなくなる…と。

こんな人物でもうまく相呈している吉乃さんはやっぱりスゴイ。

こんな子が極道の妻などになっていくのだろうか。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
とにかくここで生きていくんだという覚悟がすごくて、非日常を嗜む程度の人間では決して入って行けないような領域を感じます。

こっちの世界に入る覚悟の無い奴は隅っこで笑う資格なんて無いです。「なに笑とんねん!」とエンディングで吉乃さんがモロに問いかけてくるんですが、その気持ちもよく分かります。

©小西明日翔・講談社/来世は他人がいい製作委員会
この“舞台”に半端な奴は入ってくんな!他人がのぞき見できるような世界やないねん!

だからこの作品を見るならある程度世界観を理解して、緊張感を持って視聴してみる事をお勧めします。

感じ方、心情の読み取り方がまるで違ってきます。

ゆるやかなカオスへと坂道を降りていくようなゾクゾク感を味わえます。

アニメとはいえ本当に自分の知らない世界や立ち回りを見せてもらえて良かった。混沌を生きぬく知恵がついたと感謝しています。

暴力団幹部がなんだか乱暴~とか感じるくらいなら、このアニメというか世界に入り込まない方が良いです。

拳と力で会話してきた人間達の世界です。

来世は他人がいいと思いながらも、とことんつき合ってやろうくらいの覚悟を持った人間達の絡みは刺激的で非日常感あふれるもの以外の何物でもありません。

回を追うごとに覚悟としたたかさを深めていく吉乃さんの未来に幸あれ。





今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。