感想『かがみの孤城』前を向いて生きている全ての人に

ファンタジーを入れることで絶妙なテイストに仕上げた物語

かがみの孤城を視聴したので、感じたことをシェアさせていただきます。

この映画は上映される前から話題だったようで、アニメの上映が決定してから「どんな風にまとめられるんだろう」「どんな描写になるんだろう」という意見が飛び交うほど注目を集めていたようです。

小説出身の作品だからこそ、アニメという媒体になったときにどのように描かれるのか気になっている人が多かった…それだけ主人公達の細かい心情を表現するのが難しい作品なんだなというのはなんとなく感じていました。

この物語は現代のいじめや不登校をテーマにしているのです。

今の定番、ラブコメやアクションではなく、すこし重いテーマに踏み込んでいます。現実被害者の方は自分と照らし合わせたりして辛く感じるかもしれません。

しかし映画という尺の中で重苦しくならないように、ファンタジー要素を入れて沢山の方に今のいじめの現状を理解してもらえるように丁寧に製作しています。不登校で苦しんでいる子どもたちの気持ちに理解をしてほしいといった優しいメッセージが含まれています。そして大人としてのあるべき対応に関しても。

そんな名作『かがみの孤城』に踏み込んでいきたいと思います。やや個人的なレビューになりますが、ネタバレは無いですので。

自我が形成される段階での傷は深い

主人公達はまだ中学生という年代。

自己のアイデンティティが確立してこれから社会人に向けて少しづつ自分の歩む方向を見出していくスタートの時期です。

こんな時期にいじめなどで学校に行くのが怖くなり不登校になると、その後の人生に支障がでてしまいます。それくらい大事な年代・時期を描くのは言葉以上に難しいものがあります。

それに対して大人の価値観では「あまえ」だとか「自己責任な部分もある」とかいう見当違いなものがまだまだあります。当事者の気持ちがわからない。

本人たちにとってはそんな単純な問題ではないのです。

学校にいかない…ではなく、行けない…というのを大人たちはもっと理解してもらいたいと感じていました。その思いをうまく映像にまとめてくれたのがこの作品ではないかと思います。

この作品がきっかけで、大人や親に勇気を持って助けを求められるようになればと思わずにいられません。

そんなきっかけを映画を通して作れた、映画を通して状況を脱することができたのなら、それが少人数でもこの映画を世に発信したかいがあると思います。制作人はそんな効果も期待して製作されたのではないでしょうか?

映画がきっかけで傍観者でいてた人も、勇気を持って少しづつ“傍観するような自分”を辞めていってもらえたら嬉しいですね。





話を戻しますが、彼女たち、彼らは辛い中何とかしようと必死なのです。でもそれがまだ14~15歳という年齢ゆえ大人たちから見たら大したことないかもしれません。

昔いじめの事を親に相談したときに「そんな奴気にしなかったらいいでしょ。相手しなかったらいいじゃん」とサラッと言われましたが、子どもは気にしてしまうんです。子どもの世界では相手にしないことはできないんです。

それくらい“子どもの中の世界”はまだ狭いんです。学校の中という閉じられた世界というのもありますけど。

そういうアイデンティティが確立していない心情も分かってあげるくらいの度量や理解が大人にはもっと必要です。

大人にも見てほしいし不登校になっている子どもさんがいたら、親子で見てみるのも良いかと思いました。きっとそういう狙いで制作者もこの作品を映画化したんだと感じます。

しかしラブコメやアクションのような現代人が好む要素無しでここまで素晴らしい作品というのはあまり見ません。でもこんな感じで映画を通して世の中や人間関係が少しでも良くなるような作品が増えたら素敵ですね。

映画内では謎解きの要素も含まれているので、その要素が物語からの離脱をさせないような工夫になっています。どういう切り口でも良いので、知ってもらうことのきっかけになるならアリです。

いじめのある社会は変わらず、現状は何か好転したわけでもないのですが、前を向いて生きていくために必要な力を得られました。

一人一人の勇気ある一歩を励ましてくれます。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。