望郷リベンジャーズ 後編 ~誓いと始まり
【Chapter6】
アユケン達主要メンバーにに会う事ができた。しかし一般人の意見ということでとりあってもらえない。
このままだと取り返しがつかない未来が待ち構えていると感じ、藁をもすがる思いで裕太を見つけて壁ドンで再びタイムリープを敢行した。
現代に戻って何か糸口を掴もうとするも「交渉というものがよく分かっていない。俯瞰してもっと物事を見ないと」という情報というより精神論に近いアドバイスばかりにいら立ちを感じるタカミチ。
ヒナを助けるため、なんとかして必死に交渉してきたのが、どこかで自分一人ではどうしようもできない事を痛感していた。
再びタイムリープし、再度アユケンと交渉しようと試みるが、またも門前払いを受ける。
町の人に呼び掛けても起こるか分からない未来の話に耳を傾けようとも、動こうともしない。再度パーチンを頼るもこちらも出禁の扱いを受ける。次第に無力感を抱く様になり、彼は絶望に打ちひしがれていった。
た:ああ…もうどうすりゃいんだよ。
藁をもすがる思いで協力仰いだって誰も親身になって助けてくれない。
どいつもこいつも未来の事より今の事ばっかりかよ。
結局みんな自分が一番可愛いんだ。未来を良くしようとか口ではどうとでも言える。でも本当に変えようとしているやつはいない。現状維持っていうゆるやかな衰退を本心では望んでんだ。自分の面子を守りながら逃げ切れることを見越して。もう救いがねぇよ…このクソみたいな町はよ…
一人ででも変えようとしたって反発食らうばかりで…足引っ張って何が楽しいんだ。
ゆうたもゆうたでなんか有益な情報くれるかもと思ってたのに、結局精神論かよ。
『哺乳類の手なずけ方』とか紛争に関係ない資料しか持ってないし……どう話付けていけばいいんだよ…
会って話する事すら叶わなくなってしまったこの今……絶望的じゃねぇか…
独り言をつぶやきながらふらふら歩くタカミチ。そこに橘ヒナタ、彼女が通りかかる。
ヒ:あれ?たかみち君…だよね。なんか疲れてる感じだけど大丈夫。
た:あ…ああ。そうだな……疲れてるのかもしれないな
ヒ:なんだかひどく顔が引きつってるけど…
その時だった。
ヒナを見て、何かハッと閃いたのか勢いよくヒナの手を掴んでタカミチは走り出した。
急に手をつかまれて走り出す姿に我に戻ったヒナタは、数メートル程走った後手をふりほどき、諭し始める。
ヒ:どうしたのよ。タカミチ君。急に走り出したりして。
わけわかんないよ。どこ行くかも全然言ってくれないし。
た:あ…あぁ。ご免。疲れててさ…なんかどうでもよくなってたのかも…
ヒ:大丈夫?病院行く?
た:あぁ…そ、その…大丈夫だ。なんかさ…その…やっと落ち着いたよ。やっとなんか、「俯瞰して自分を見る」ってのが出来るようになったのかも…な…そうだよ。やっとわかったよ。
そうだよ…初めからこうすれば良かったんだよ。まったく思い上がるにも程があるってことだ。
ヒ:何言ってるの?
た:ヒナ…
ヒ:うん。
頭を下げ、そっとヒナに向けてを差し出した。祈るような思いだった。
た:俺と一緒にこんな町出よう。おれなんかがなんかしたところでダメになるだけだ。
この町にいちゃいけないんだ。四万十町にいても俺は何もできない。だからって色々画策しても無力さは変わらない。
それがよく分かったんだよ。だから俺と出ていこう。ヒナ。
ヒ:え、出ていくって…
た:俺か、俺以外か…選んでくれ。
高速バス使って東に向かおう。高知を出てずっと東。東京だ。
そこの世田谷あたりで小さなアパートでも借りて二人で暮らすんだ。辛いことがあってもおまえがいればきっと頑張れる。どれだけ疲れてもおまえが待っててくれるって思えばきっと…」
(少し呼吸を整えて…)俺を選んでくれ。俺を選んでくれれば俺の全てをおまえに捧げる。
だから俺と一緒にこんな町出よう。俺と生きてくれ。
ヒ「たかみち君…
私はたかみち君と出ていく事はできません。
だって“その未来”を本当に望んでいるような顔じゃないから…その選択をして本気で後悔無いって感じがしないんだもん。町を出ていくって言った時、私と一緒にいたいと思ってくれたことが、今は心の底から嬉しい。
でもダメ。あきらめるのは簡単だけど、それは今のたかみち君の本心じゃないでしょう。
たかみち君がどんなにつらい思いをしたのか、何があってそんなに苦しんでいるのか、私にはわからない。
分かるなんて軽はずみに言ってはいけないと思う。でも自分にだって分かってることがある。
あなたの本心はそんな簡単にあきらめられないってこと。」
た:諦めるのは簡単だぁ?ふざけんな!諦めるのが簡単なわけ無いだろうか!
もう悩んだんだ…考えたんだ…苦しんだんだ。だから諦めたんだよ。
諦めるのは簡単なんかじゃなかった。戦おうって、どうにかしてやろうって、そう思う方がずっと楽だったよ。
だけど、どうにもならないんだよッ!! 道がどこにもないんだッ!! 諦める道にしか続いてないんだ!!
何とかできるんなら……俺だって、俺だって……
だから諦めたんだよ。俺みたいなのがなんとかしようなんて、どだい無理なことだった。
お前におれの何が分かるんだ。俺はこの程度の男なんだよ。
力なんてないのに、望みは高くて。知恵もないくせに、夢ばかり見てて。できることなんてないのに、無駄に足掻いて。俺は……俺は、俺が大っ嫌いだよッ!!
いつだって何ができるわけでもねえのに…自分じゃ何もしねえくせに文句をつけるときだけは一人前だ。何様のつもりだッ!?よくもまあ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなあ!?
……空っぽだ。俺の中身はスカスカだ。俺がこの年まで、何をしてきたか分かるか?
逃げ続けてきたんだ。何一つ現実に向き合わず逃げてばっかだった。
あれだけ時間があって、あれだけ自由があって、何だってできたはずなのに
何もやってこなかったッ!! その結果がこれだッ!!その結果が今の俺だッ!!
俺の無力も無能も全部が全部……俺の腐りきった性根が理由だ。
何もしてこなかったくせに、何かを成し遂げたいだなんて、思い上がるにも限度があるだろうよ!
怠けてきたツケが……俺の盛大な人生の浪費癖が……おまえやこの町の未来を殺すんだ。
そうさ……性根もなにも、この場所で生きていくんだって、そう思ったって何も変わっちゃいなかった。
俺はただ何もやってないわけじゃないんだって、分かりやすいポーズをとって自分を正当化してただけだ。しょうがないって言いたい。仕方がないって言われたい。
俺の根っこは……自分可愛さで人の目ばっかり気にしてるような、小さくて卑怯で薄汚い俺の根っこは、何も変わねえッ!!本当は分かってたさ……全部、逃げた俺が悪いんだってことぐらい。
俺は最低だ……俺は俺が……大嫌いだよ……
タカミチが話し終えた後、間を置いてヒナは言葉を発し始める。
ヒ:私は覚えてます。あなたが言ってくれたことを。ここで…この町にいるお前が好きだって告白してくれたじゃない。なのに簡単に未来を諦められない人だっていうのを知っています。
また少し間を置いて静かに話し続ける
…四万十川で育った鮎が好きです。
川の質が良い分、他の川鮎と比べてもおいしさの質が全然違うから。
県外からわざわざ鮎釣りにやってくるくらい人気なんです。
ヒ:四万十川で育ったお茶が好きです
渋みと香りがとても上品で、自分でお茶をたてたいと思えるほどの魅力がある逸品だってこと。
ペットボトルなんかに閉じ込めるのがもったいないくらい。
た:やめろ…
ヒ:四万十川で育ったお米が好きです。おいしさを引き出す特殊な技術なんか使われていて全国コンクール受賞レベルなのも伊達じゃないくらい。そんなお米が…好きです。…おいしいです。
た:どうして…
ヒ:たかみちくんがこの町のことを嫌いだって言うのなら、いいところがこんなにあるって、私が知っていることを知って欲しくなったんです。
た:そんなものはまやかしだ。全国どこ行っても似たようなものはある。お米なら東北とか…
お前は分かってないだけだ。この町のことは自分がいちばんよく分かってる!
ヒ:たかみちくんは自分の見た四万十町のことしか知らない!
私が見ている四万十町のことを、どれだけ知っているんですか?
ヒ:私がいます。 たかみち君の言葉なら何だって聞きます。聞きたいんです。
た:誰にも期待されちゃいない。 誰も俺を信じちゃいない。 俺は俺が大嫌いだ。
ヒ:大丈夫です。 空っぽで、何もなくて、そんな自分が許せないなら、 今、ここから始めましょう?
1から…いいえ、 40010(しまんと)から!!
た:その言い方、ちょっと無理あるんじゃね?
ヒ: と~に~か~く!一人で歩くのが大変なら、私が支えます。だから格好いいところを見せてください、たかみち君。
しばらく間を置いてからタカミチは話し始めた。
た:ヒナ…
ヒ:はい。
た:俺はこの町が好きだ。
ヒ:はい。
た:この町の未来を救う手助けがしたい。辛くて苦しい未来がこの町を襲うんなら、みんなで笑っていられる未来に連れ出したい。
ヒ:はい。
た:手伝ってくれるか?俺一人じゃ何もできない。俺は何もかもが足りない。まっすぐ歩けるような自信が無い。
弱くて、もろくてちっぽけだ。だから、俺がまっすぐ歩けるように、間違っても気づけるように手を貸してくれないか?
ヒ:ふっ…たかみち君はひどい人だね。
バイト上がりでクタクタの相手にそんなことを頼むんですか?
た:俺だって疲れてるおまえににこんなこと頼みづらいよ…
お互い少し笑った後、間を置いてからヒナは答える。
ヒ:謹んでお受けします。それであなたの望む未来にたどり着けるなら…
ここからもう一度始めよう。そう決意したタカミチであった。
【Chapter7】
ゆ:それでは、あなたの報告をもう一度復唱してみましょうか。
では、プロジェクター、たのみます。
た:はい。では僕が対応してきた軌跡を流します
ゆ:四万十川の情勢を一通り把握したあなたは、その首謀者でもある鮎宮寺健氏。通称アユケンの下へと向かった。
話から分かった情報として、四万十卍會。その幹部内での仲のこじれが原因で四万十町が混とんとしていく内部事情が分かった。今のインフラの不備や治安の乱れは、これが原因と推定される。
幹部をまとめるアユケンはその内部の乱れを止められずに殺されてしまったとみていいだろう。
なんとか話を聞きだしていく中で、争いの渦中となる二人の情報が明るみになった。
1人は、四万十卍會1番隊長、林田 夏樹。通称「パーチン」。
そしてその副隊長として四万十下流から海へとつながるルートを仕切っていた男。
名前は分からなかったが、おでんが大好きだという事から通称「オデンスキー」と呼ばれている男。
オデンスキーがパーチンの下を離れてしまうと、四万十卍会は川から海への航路が閉ざされてしまう。それだけは何としても避けようとしたため、パーチンは過激な行動をとらざるをえなかったのだろう。
彼ら二人の衝突を避け、来るべき最悪の事態を起こさない世界戦実現のために、二人の説得へと捜査は進んでいく。
ゆ:彼らを陰で操る存在が捜査線上で明らかになる。外部組織『NATTO』が、外堀から四万十卍会をつぶしにかかろうとしていることが分かってきた。
NATTOがパーチンの副隊長オデンスキーを調略させ、アユケンの仲間達が追い詰められて無茶をしたのが、殺伐となった現在に繋がっているわけです。
NATTOの動きがまったく読めないあなたは、俯瞰して思いとどまってほしいという一心で、一人パーチン、オデンスキーの説得に向かいます。
しかしあなたは軽くあしらわれる。将来どうなるかなんて伝えても肝心の証拠がない為、話にならずに何度も突き返されてしまいます。衝突は不可避とすでに腹をくくったオデンスキーさん。
なにか大きなコネクションもないあなたの立場では正直変えることは厳しいと感じていました。万策尽き、自暴自棄となったあなたですが、ここからなぜか視点を変え、他の町の協力を得ようと動き出します。
ここら辺の柔軟な考え方は私でも思いつきませんでしたよ。たかみちさん、あの後何かあったのですか?
今までの流れを見ていくほどに、この後の行動から嘘のように解決に向かっていったような気がするんですが…
た:いや…ちょっとな。まぁこっちの事だよ。
ゆ:四万十町からはずれにある黒潮町、中土佐町。
こちらのエリアは鰹漁をはじめとした漁業が盛んでしたが、長きにわたり「酔鯨(すいげい)」というクジラの被害にあい、漁師を苦しめてきました。
そんなあなたに恩義を感じた二つの町は、あなたと四万十町に対しての援助を申し出てくれます。
二つの町の陣営の力を得て、崩れかけていた四万十卍会の皆さんへの休戦に成功。一方的に内部の人間が説得しても変えられなかった。…これは外からの声という俯瞰して見た視点あってこその勝利と言えます。
結果今に至るまで、争いは防げました。
…………タカミチさん。
やってくれましたね。
結果、四万十町は以前のように他地域から見限られた土地ではなくなりました。
昔と変わらない雄大な自然溢れる景色は守られました。
四万十町を仕切るアユケンさんがいない世界だと、またNATTOの策略などで内部抗争が始まる恐れがありますが、アユケンさんは存命。結果、町が彼を軸にまとまっていくでしょう。
たかみちさん。僕は正直あたながここまで未来を変えてくれるとは思っていませんでした。
でもここまで未来を変えられたんです。
だからこそ会ってあげてください。…姉に!
た:ヒナ、生きてるんか!
良かった。生きてるんだな!彼女と一緒にここまで来れたんだ。約束の未来につれてってやれて良かったよ。
救えて…本当に…良かった…
感慨深い様子のタカミチ。少し間を置いてかれは提案を話し始めた。
た:ヒナは今どこにいるんだ? 10年後だからキレイになってるんだろうな~きっと。
た:姉は今、学校の教師をしています。今はまだ勤務中ですが、夕方には家に戻ってきますよ。
是非直接会っていただきたいのですが、もう暫くお待ちください。御兄さん。
ゆ:お兄さんってちょっと照れるよな~まぁそうでもあるかも…ははは…
た:姉と四万十町を救ってくれたんです。ゆうたさんには感謝してもしきれませんよ。この町を救ってくれた英雄に今日は家族でお礼させていただきます。
ゆ:そうか…なんかおまえにも苦労かけたな…
まさか壁ドンがこんな効果を生むなんて考えもしなかったし。
……というか、お前に壁ドンしてタイムリープできるっていうのは何も過去だけじゃないわけだよな。
ゆ:え?それはどういうことですか…
た:壁ドンでタイムリープして過去に行けたわけじゃんか。だったら未来にも行けるんじゃないかって。
ゆ:未来にも行ける…確かに…でも、そんなの今まで必死だったので考えもしませんでしたよ。
た:俺も今思いついたんだ。でももし「未来に行ってみたい」って思いながら壁ドンしたなら…
ゆ:未来にタイムリープするのも不可能じゃないと…
た:そう、未来の俺たちがどうなってるのか無性に見てみたくなってきてさ…。
俺は…そう、ヒナとはもう結婚してて…なんか子煩悩なパパとかになってるかもしれないし。
ヒナがかえってくるのは夕方だろ。だいぶ時間あるんだし、その間少しだけでも見てみたいと思ったんだ。
行けたらの話なんだけど、ちょっとやってみてくれないか?
ゆ:まぁ未来に行って今が変わるわけではないと思いますので、いいですよ。でもちょっと様子を見たらすぐに僕をみつけて戻ってきてくださいよ。
た:分かってるって。俺たちの未来がどうなってるのか確認したいだけだから。変な事しないさ。
ゆ:分かりました。では成功するかどうかは半信半疑ですが、やってみましょうか。
【Chapter8】
試しに壁ドンをしてみたたかみち。
なんと彼の予想は当たり、見事に数年後の四万十町にたどり着くことが出来たのであった。
自然は変わらず豊かで、町も以前より活気が出ていて、観光客も増えている四万十町。
自分がその礎を作ったんだと改めて実感しながら、ヒナの自宅を目指した。
安心したよ。なんだか外国語の標識ばかりで日本語の標識が無いのは気になるけど、まぁ海外の観光客が多くなってるってことの裏返しなんだろうな…
川沿いにはなんだか立派な別荘も建ってたし…
もしかして四万十川が、「世界自然遺産」とかになってたりして…
しかし、やけに中華系というか外国の人ばかりだな…
なんつうかここ数年でアジア人の観光客が増えたってことなのかな…看板も全部中国語だし。
さてと…もうすぐヒナん家だな。
俺たちどうなってんだろう。結婚はさすがにもうしてるよな…
町中へ入った途端、運良くヒナを発見する。
しかし彼女の表情は冴えず、どこか悲壮感が漂っていた。
それでもタカミチに気づいた彼女は、少し驚きながらも話しかけてきた。
ヒ:あれ、たかみち君。こんなとこで何してんの?まだここに滞在しても大丈夫なの?
た:ヒナ!って…たかみち…くん?なんで?俺たち何も進展してないってこと?
それに何引っ越しみたいなことしてるんだ。
それにその…結婚とかは…
ヒ:何言ってるの、今時結婚なんて裕福な家庭か、特権階級くらいしかできないの知ってるでしょ。私たちは税金納めるので精一杯なんだから。
た:なんだよその特権階級って。
ヒ:タカミチ君こそなにとぼけてんのよ。
地元のほとんどの人が土地の税金払えずに家を売るか出稼ぎに行くしかなくなったんじゃない。
私も明日には武漢へ長い間出稼ぎに発たないといけないから急いで準備していたのに。
た:え?え?なんで税金がそんなにかかるんだよ。それに、武漢…って中国だろ?
みんな出稼ぎとかでどっか遠くに行ってしまったってことかよ。
なんでヒナまでそんな異国の遠い場所に働きに出ないといけないんだよ。
ヒ:今更何を言ってんの?もうここは日本じゃないの。中国の領土になったの忘れたの?この自然も土地も私たちの場所じゃなくて、中国の別荘地になってるって知ってるでしょ。
た:そんな馬鹿な!じゃあこの四万十町は…
ヒ:もう「内 四国・四万十自治区」になってるよ。何を今更。たかみち君家ももう出稼ぎか自宅売却しか生活の方法がないんだから早く働きに出た方がいいよ。国は…元日本国民には何も援助がないんだから自分の暮らしを守るためには仕事があるところへ出ていくしかないんだよ。あたしは明日発つから。
もう行ってしまえば次いつ会えるかどうかわからないけど…でもね、頑張って生きるよ。
あ…ごめん、たかみち君。…準備あるから。
た:ヒナ…そんな…嘘だろ…ヒナが出稼ぎで海外へ行かないといけないなんて…どうなってんだこの町は!
なんだよ…「四万十自治区」って…
そんな…嘘だ嘘だ嘘だ!
こんな未来… そうだ! ゆうた! ゆうただ! 警察署だ!
ここがもう日本じゃないなんて!なんだか悪い夢でも見てるみたいじゃないか!
タカミチは息を切らしながらゆうたのいる警察署へ向かった。
この未来はどうなってしまったんだ。頭の整理に必死だった。
息を切らせながら警察署へ乗り込みタカミチ。
た:すいません。誰か!
警官:(簡体語)ニーチーダウ チュークースーデ イースーマー?
た:うるせぇよ日本語しゃべれよ!ゆうた!ゆうた居るだろ!出てこい!どうなってんだ。コレ!
窓口の警官はカタコトで話してくる。それだけで不快だった
警官:誰だね君は。まだ日本人の滞在者がいるのか。
よっぽど裕福な家庭でないと暮らせないのに君はどこの日本人だね。
た:日本人とか言うな!なんで当たり前のように受け入れてんだ!ここは日本だぞ!
警官:君ね、あまり日本を声高に言うと捕まるよ。ドローンなどで点数の低い人間は常に監視されている事を忘れないように。「ユータ」?…あぁ、タチバナ君だね。待ちなさい。呼んでくるから。
た:(うそだ!うそだ!こんな悪夢のような世界!未来の俺たちはここに暮らすことすら叶わなくなるっていうのかよ…嘘だろ!)
程なくしてゆうたがやってきた。顔は歳のせいかかなりやつれ表情に覇気は無かった。
警官:君を指名しているみたいだ、取り繕ってあげてくれ。
ゆ:はい…。
た:おい!これはどういうことだよ。ヒナが…ヒナが明日にでも海外に売り飛ばされるみたいになってるじゃんか!どうなってんだよ!悪い夢じゃないんなら説明しろよ!
警官:日本語は苦手だ。ユータ君、担当をタノダヨ。
ゆ:…承知しました。
た:おい!なんとか言えよ。
ゆ:たかみちさん。…あなたは未来にきたばかりのタカミチさんですよね。
…残念ながらもうどうしようもなかったんです。
日本は事実上中国の属国となりました。もうこうなった以上僕ら日本のイチ警察官がどう動いても変えることは出来ません。日本の暮らしやすいところや自然の豊かなところは、ほぼ中国のリゾート地として権力で土地を塗り替えられてしまいました。もう僕ら行政が太刀打ちできるような問題じゃなくなったんです。
どうしようもないんです。国が相手じゃ太刀打ちできませんよ。
僕も、日本人が納得がいかず暴動が起きた時の仲裁要因として配属されているだけで、もうそんな長くこの町にいることは出来ません。姉も、家族も…生活を守る為どうしようもなかった…
どうすることもできなかったんです。
た:だからってすんなり受け入れてられるかよ!
何が「四万十自治区」だよ。俺とヒナが必死で守ってきたこの町を…俺たちの町をわけのわからん奴に実権握らされて平気でいられるかよ!
ゆ:たかみちさん!もうどうしようも…
た:うるせえよ!
ゆ:たかみちさん…分かってください…国が相手じゃもう…
た:うるせえ!コレはオレの人生のリベンジだ。諦めない!
ゆ:でももうこうなってしまっては…
た:だからお前がいるんだろ。壁だ!壁!またタイムリープして、来るべき未来に向けて対策練れるだろ!
あきらめねぇ!
ゆ:たかみちさん!問題の規模が違いすぎます。
た:だから諦めねぇって言ってるだろ!たとえ国が相手だとしても…運命様上等だ!
ゆ:そんなこと言ってももう僕には…
た:いいか…もう日本を…国を根本的に変えていくしかないんだ!
現代に戻ったらおれが、日本をもう一回洗濯してみせる!
腐りきった日本の政府を変えるチャンスがあるならなんだって乗り越えてやるよ。
何度だって諦めない。道はきっとある!ヒナが…教えてくれたんだ。
あの時…四万十から始めるって……約束…したんだ!あいつと。
ゆ:タカミチさん…
た:俺とお前で何度でもやりなおす。来るべき未来を変えていくのは俺たちだ。
ゆ:日本を変える…なんて土台考えてもみませんでした…でも。
た:できる! 未来を変えるなら「今」を変えるしか打開策はないんだ。
約束の未来に連れていくって…ヒナに誓った…
俺たちのリベンジは今はじまったばかりなんだ!
‹終わり›