「めでたしめでたし」って何だろう?
今回はレビューとして名作の絵本を取り上げます。
絵本のタイトルは、「チリンの鈴」
この作品にはご縁があって、演劇で関わる機会がありました。
原作のやなせたかしさんの説明は不要だと思います。
しかしやなせ先生はこんな素敵な物語も世に残してくれていたんだなと、振り返れば感謝の気持ちでいっぱいです。
レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。
周作(twitter:DarvishShu)です。
今回は名作の絵本「チリンの鈴」の感想をシェアしたいと思うのですが、皆さんはこの絵本はご存じでしたか?
自分が生まれる前にデビューした絵本です。もう40年以上経つんですね。
今回はこの作品についてのレビューを、皆さんとシェアしたいと思います。
チリンの鈴はアニメーションにもなっています。
▼物語を知らないという方は、(消されてないなら)どうぞ。
正解は自分で決め、道は自分で切り開く!
主人公のチリンは羊。
狼には普通に戦ったら負けてしまいます。…お肉、というか食料にされます。
ある日、チリンをかばってお母さんが殺されてしまいます。
そこから物語が動き始めるのですが、要するにチリンは羊というカテゴリーを飛び越えて、狼にも負けない最強の野獣へと成長するわけです。
ポケモンも真っ青の進化を遂げていきます。
大型の獣にだって負けないくらいの強さを手に入れたものの、そうなった時には森の動物からは恐れられるような存在へ。
羊は肉食動物に食べられるという自然の掟・セオリーが狂います。
そうなったチリンはもはや羊ではないのです。
恐れられ、羊の群れからも去り、一人で生きていくチリン。
なんだか切ないのですが、自分の生き方を自分で決め、強い意志を持って自分で道を切り開いてきた結果なのです。
お母さんや仲間を守ってあげられる強い生き物になりたいという純粋な思いから突き進んだ道なのです。
その結果、羊でも狼でもない「得体の知れない“ぼっち”」になってしまった…
それでもこの結末は自分で決めた道だから良かったのだろうか……?そういう余韻の残る“名作”になっています。
正解は提示しない方が良い。自分で考えよう
この作品を見終えた後、ついついどういう選択が良かったのかと考えてしまいます。
羊のままでいた方が良かったのか…身も心も狼になってしまえば良かったのか…
しかしこれらは僕らの思考のクセです。
現実世界に本当の「答え」はないのに、安易にそれを求めようとします。
自分の中でコレという確かなものを腹に落とし込んで、安心したいのでしょうね。
今、昔の価値観がかなり崩れてきています。
「良い大学、良い会社に入れば人生正解(安泰)」とかが今代表的なぶっ壊れている価値観でしょうか?
でもそれよりもずっと前に、やなせたかし先生は、安易に答えを求めるのではなく、人と違ってもいいから自分で考えて信念を持って生きる事の大事さを伝えようとこの作品を残してくれたんでないかと思います。
※僕のこのレビューが正解のレビューってわけでもないですよ!お間違えなく!!
答え探しに奔走せずに自分で道を決断して、そこへ向かって進む事。
時代が激しく変動している中、不安感が募る今だからこそ、この「チリンの鈴」から何かを感じられるのではないかと思い、今回紹介させていただきました。
かわいらしい一頭のヒツジの物語からこんな結末に向かうこのお話を子どもたちだけでなく大人にも是非読んでもらいたいです。
強烈な生き方へのメッセージが込められています。
ヘタしたら大人の方が何かに依存している人が多いかもしれないので、よけいにこの作品はおススメしたいですね。
最後に…
「絵本」は“子どもが読む本”ではないです。
絵の本です。
大人が読んでも全然変じゃないです。大人でも刺さるメッセージが沢山あります。
そして、グリム童話なんかは特にそうですが、物語が綺麗に終わるケースが稀です。
だいたい何かテーマを残して(余韻を残して)物語は終わります。
それが名作たるゆえんでもありますが、とにかく自分の中の「こうあるべきだ」というものを見つめなおすきっかけになる作品が多いので、気分転換に図書館などで絵本を開いてみるのをお勧めしたいです。
絵本ということで、絵が豊富ですが、その絵も独特のタッチのものが多いです。
感性的なものでも非常に豊かになれますよ。
まぁ子どもの頃はみんな感性の塊みたいなものです。
社会に揉まれていくうちに感性が死んでいくので、そんな自分の童心を取り戻すビタミン剤みたいなイメージでとらえてもらえたら、絵本を読むというのが充実した時間になると思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
やなせたかし作・絵
フレーベル館 1978年10月初版