「盾」とはいったい何を意味しているのか?そんな疑問から見始めた作品
レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。
周作(twitter:DarvishShu)です。
今回は、学生だけでなくアラフォー世代のビジネスマンであっても十分勉強になると感じたアニメがあるので紹介させていただきます。
私事ですいませんが、アニメは疎い方です。30過ぎて初めてガンダムを知ったくらいのレベルです。
今回、皆さんに是非紹介したいのは「盾の勇者の成り上がり」というアニメ。
現代社会の風刺ともとれる部分が多く、今現実の不条理な社会で一生懸命がんばっている大人達に心から勇気と希望を与えてくれるお勧めの作品です。
一風変わった視点からのレビューに、是非お付き合いください。
まずはこのアニメの基本情報を紹介します。
※作品を見る前に最低限の情報をWikipediaで調べてから見るようにしています。
盾の勇者の成り上がり
著者/アネコユサギ
イラスト/弥南せいら
放送/
第1期:2019年1月~6月
第2期:2022年4月~
この作品を見ようと思ったきっかけは、スマホで遊んでいるゲーム「チェインクロニクル」がコラボイベントでこの作品を紹介してくれたこと。
そこで、「盾」のみを使う主人公がいるというのを知りました。
自分で攻撃が出来ないという一風変わった設定と「成り上がり」というタイトルに興味を惹かれました。
だって普通は剣や拳、世界観によっては魔法を駆使して道を切り開いていくのがセオリーなのに、なぜか「盾」なんです。
攻撃が出来ないという謎の設定なのに、アニメ化されて続編も決定するほどの支持を得ている訳で、『何かよっぽどの魅力がないとここまで人気は出ない。その理由は何だろうか?』と気になったので見てみることにしました。
初めは、「盾というものが何を意味しているのか?」という作者の意図みたいなものが分かれば途中で見るのをやめようと考えていました。
だって全25話もある大作です…長いです。
この物語を通して作者の伝えたいメッセージ(意図)が分かったら終わりにしようと思ったのですが、その思いは良い方向に大きく裏切られました。
ビジネス書など本を読むのが苦手な人に見てほしい
主人公は突然図書館から異世界に飛ばされてしまいます(正確には召喚されてしまう)
そこはかなり理不尽な世界で、それでも現実を受け止め、希望を求めて主人公はめげずに生きていくのですが、その世界観が周りの建物の風景こそ違えど、まさしく今の日本の現代社会と共通する部分が多いのに注目しました。
実際に社会にある詐欺のような勧誘…妬み、差別、裏切りなど、自分たちが生きている現実とあまり変わりないのです。
この作品の世界観は現代社会を比喩したもの(メタファー)ではないかと強く感じます。
僕たちが生きている社会は成り上がることが難しいくらい格差が進んでしまい、資本力や情報の乏しい層は本当に苦しい日々を送っています。
力のあるものはあるもので、王に取り入ったもの(大企業)ばっかり守って、低所得の方の気持ちを殆ど汲んでくれません。
ただただ「自粛」とか言うだけでなくて…保証してくれよ…
まさにそんな今の日本社会の様子を西洋風の町にアレンジしたのが、『盾の勇者の成り上がり』の世界。
なので、この物語はファンタジーなジャンルですが意外と舞台公演などに向いているのではないかと感じました。
とにかく自分の都合だけで生きている人間が多すぎる…それを知っている社会人の方は、このアニメを見ていると現実とシンクロしてしまい、あまりアニメを楽しむという気分になれなかったと思います。
つい現実の事を思い出してしまい、見るのがつらいと感じた人はいるかもしれません。
自分の頭で考えずに安全圏から平気で人を見下す人々…どの世界にもいます。
自分のアタマで考える事の大切さがわかる傑作
しかしそんな異世界での奮闘の中で、主人公の生きざまを通しつつ、現代社会でも生き抜いていくためのヒントがいろんなところに散りばめられていました。
作品を通して特に自分が受け止めたメッセージは
「自分の頭できちんと考えろ」ということ。
この作品をお勧めするポイントでもありますが、「自分の頭で考える」ということはどういうことかを、失敗例(?)を交えてわかりやすく伝えてくれています。
主人公以外にも3人の日本人がこの世界に召喚されるのですが、彼らは学生上がり。
「相手を出し抜いてやろう」「自分は間違っていない」等の現代教育の弊害を受けているといわんばかりの思考パターンで「自分の頭で考えているようで考えられていない」部分をあぶり出してくれています。
普段僕らは、自分の頭で考えているようで、実は誰かの刷り込みだったり、凝り固まった思考パターンの範囲内でしか考えられていなかったりという事が実は多いのです。
それを「客観的に見るとどんな感じなのか?」というのを他の3人が分かりやすく表してくれます。
「自分の頭で考える」というのは大切なことなのですが、その言葉の意味は深いです。
言葉だけでは伝わりにくい部分があるのですが、このアニメではいろんな事例を元に『本当に自分で考えた決断なのか?自分の思い込みではないか』というのを客観的に見ることができます。
そういう点では、「社会人としての教養などを学びたいけど、ビジネス書や啓発本を読むのが苦手」という方は、迷わずこの作品をお勧めしたいです。
自分のアタマで考えることの大切さ以外にも、現代社会を生き抜くために必要な考え方や事例を次々と投げかけてくれます。だからこそ初めはしんどい展開が続きますが、是非見てほしいと感じました。
自分も自粛要請のこの時期に積読(つんどく)になっていたビジネス書を読もうと思ったのですが………なかなか内容が頭に入ってこない状況で…恥ずかしいかぎりです。
でもこの作品は本当にダメな3人を引き合いにして、社会で生き抜く術をわかりやすく伝えてくれています。物語としても楽しめますが、“ためになる”エピソードが満載でした。
4話がこの物語のキーポイント
主人公の尚文君がやってきた異世界は、落とし穴や裏切りの多い厳しい世界。
社会から孤立させられて、そのうえ盾しか使えない状態。
「武器が使えない、素手でしか戦えないから攻撃力がない…攻撃力がないからモンスターを倒せない。倒せないからレベルが上がらない、お金もたまらない…悪いループだ」
尚文君はこんなボヤキをつぶやくのですが、これって今の現代社会でも同じようなループに陥っている人がいると思います。現代風に言い換えます。
『手に職(スキル)や知識がないから仕事が選べない…選べないから低賃金での仕事しかできない…だれでもできる仕事だからスキルが身につかない…お金もたまらない…悪いループだ』
と、こういう感じにとらえてもおかしくないと思います。
そう考えたら「盾」というのは何を例えたものなんだろうか…?
他の「剣」や「槍」「弓」は、政治家とか高級官僚とかの役職・地位の高さを指しているのかな…と序盤は色々考えながら見てました。
これ以外にも色々と現代に置き換えられる部分があり、この作品全体を通して現代社会の比喩を含んでいる部分が結構多いなぁ…と感じます。
尚文君のスタートはなかなかハードな船出ですし、事態が好転することもないので次第に心がすさんでしまいます。知らない間に食べ物の味がわからないくらい感性や心を閉ざしていたのも後になって判明します。
自分も若干、今までの人生で尚文君と被るところがあったので、まだ若干20歳くらいの彼にはさぞ精神的に堪えるだろうなぁと感じてました。
思わぬチャンスに巡り合い、大きな功績をあげて奇跡的に飛躍する、というわけでもなく不利な形勢が続きます。
でも彼は絶望の寸前から立ち直ります。
立ち直るきっかけになったのは4話の後半のエピソード。
結構序盤の方なので、この作品を初めて見る方はここまでは見てみることをお勧めします。
自分の結論としては、4話を見終わった段階で、「よし!この作品は最後まで見よう!」と感じました。
恐らく彼と同じように世間から騙されたり虐げられたりして深く傷ついている方がこのシーンを見たら、胸で詰まっていたような辛い思いが止まらなくなるように感じます。
自分も尚文君ほどではないにしても、理不尽な経験をしたことがあるので、感情輸入できた分彼の辛さはよく分かります。
でも今、どんなに辛くとも、彼と一緒に自分ももう一度立ち上がろう!這い上がろう!そんな勇気をもらえた話でした。
立ち直るきっかけはお金でも権力でもない
「自分にはお金がないから無理だ」「権力や地位があればもっと大成できたのに」という声はあります。でも本当に自分自身を立ち直らせるのは、自分の心からの意思です。
そのためには自分自身を認め、信じる事。
心から信頼できる仲間を得る事。
それだけで人は踏みとどまれるものです。
どんな底からでも這いあがれるのです。
「ここの世界じゃ自分はどんなに頑張っても負け組だ!」と主人公の尚文君はあまりにも救いのない現実に失望するのですが、多分現実社会に対して彼と同じように感じて、絶望している人も多いかと思います。
そんな失意の中でヒロイン・ラフタリアが投げかけてくれるメッセージがとても心に響きます。
物語の中とはいえ、主人公は絶望の既の所でなんとか救われたなぁ…良かったなぁと胸が熱くなりました。
今、世の中に希望が持てない方に見てもらいたい、聞いてもらいたいメッセージです。
この4話のタイトルも秀逸です。「暁の子守唄」
だからと言ってTwitterとかに「やっと見つかったよ…俺の嫁…(涙)」とか書いて感傷に浸るのではなく、人が立ち直るきっかけみたいなもの、ヒントを感じてもらえたらと思います。
あくまで立ち直るヒントです。ラフタリアはこの現実世界に召喚して連れてくる事はできませんので
余談ですが…
昔のガンダムのような硬派な例外作品もありますが、今のアニメ作品は大体7:3くらいで女性キャラが多いです。
作品が全体的に華やかになるし、ヒロイン達の人気が上がればグッズやフィギュアなどの二次商品が売れて収益が見込めます。
でもこの作品は、3:7くらいで男性キャラが多いのです。
そこから考えると、この作品はキャラ人気を狙った作品というよりもメッセージ性の強い作品であるのが感じ取れます。
話が重たくならないよう、主人公の周りは女性で固めてるのですけど。
現代社会での生き抜き方から世界の在り方へ
この作品は途中から「抽象度」が変わります。
前半は、これからの“現代社会”で生き抜いていくための考え方を記してくれますが、後半になるとこれからの“世界”で生き抜くために日本・日本人としてどういう方向に進めばよいか、どういう選択をしていけばよいかというメッセージが込められているのではと感じます。
著者のアネコユサギ先生がそういう意図を含めて物語を描いたのか、盾の勇者の製作委員会の方々がそういうメッセージ性を込めて制作したのかどうかは分かりませんが…
『ある程度生き抜く術が分かったならもうあなたは大丈夫。次はもう少し見る視点を広げて、今危険な状態になりつつあるこの世界をどうしていくかを考えよう!なぜなら世界は今、大変な方向に進んでいるんだから!』というメッセージを感じます。
今、現実は新型コロナウイルスによる経済停滞の影響が酷くなってきました。
終息したとしても、後の世界(アフター)の動きを考えたら、国同士非難しあっている今の状態のままでは危険な方向に向かっていく可能性が高いです。
国同士のいがみあいが激しくなると戦争が起こるかもしれない…そんな声も出ています。
『世界終末時計』ってご存じですか?
これは、今まさに世界で騒がれている『世界終末時計』をさしているのでははないでしょうか?
そして『厄災の波』もそうです。
今の現実世界で何を表しているのかというのは画像を見れば初めての人でも分かります。
空からモンスターが降ってくるのを見てたらこれはどうみても「地震」や「津波」「豪雨」や「ハリケーン(台風)」のような気候変動による自然災害のメタファー(比喩)ではないかと感じずにいられません。
それを踏まえてのとあるシーン
「厄災の波が来て村に被害が出ているというのに、勇者同士がいがみあっていて一向に解決しない」
この部分、現実世界的に言えば『天災やウイルスで世界が大変なのに、大国で力のある中国やアメリカは手を取りあって解決しようとせず、お互いの利権を主張しあったり、賠償金を吹っ掛けあう状態』という今の世界情勢の比喩ともとれるのではないかと感じますが皆さんどうでしょうか?
そこでの主人公要するチーム「日本」はどういう方向性を見出して解決へ導くのか!?みたいな捉え方で見ています。
↓ 自分が深読みしすぎなのかもしれませんが、物語後半を交えたレビューは、長くなりましたので次回お伝えします。
このアニメはBGMも良いのですが、特にエンディング曲がとても素晴らしいです。物語と唄の歌詞がシンクロしている部分があり、歌声もメロディーも心に染み入ります。
藤川千愛さんの歌『きみの名前』ここ5年くらいで一番の推し曲になりました。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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