感想『ぷにるはかわいいスライム』ドラえもんに風穴開けようとした作品

普通に見れば全年齢楽しめるホームアニメ…だが!

レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

今回はウェブコミック配信サイト『週刊コロコロコミック』(小学館)にて連載されている作品をレビュー致します。

タイトル名は『ぷにるはかわいいスライム』

…ってことはスライムなんだな…

子どもの頃コロコロコミックを読んだ思い出がありますが、その子ども向け雑誌からアニメ化という事で、面白おかしな日常が描かれるようなアニメが想像できます。

子ども向けの雑誌は、ミニ四駆みたいなのを除けばドラえもんのようなアイコンとも言える可愛いキャラを中心に話が展開されるのがセオリー。…というかその方が子ども達がなじみやすいです。

作品の紹介サイトを見ればその作品のアイコンとなるキャラが分かります。

“ぷにる”というスライムに命が宿ったキャラクター。

スライムなので色んなものに変化が可能という設定が色んな方向にアイディアを広げられます。

主人公の河合井コタロー君(中学2年生)が小さい時にスライム遊びをしている時、そのスライムに命が宿り、それ以降は河合井君の相棒として一緒に暮らしてきました。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
それが“ぷにる”と名付けたスライム。“ともだち”として仲良く一緒に過ごしていたのですが、年月が経ち河合井君も中学生という多感な時期に入ります。

そんな年齢に差し掛かった時期に、ぷにるは美少女な姿をはじめあらゆるかわいい姿に変身するようになります。

年頃の男の子は気になります。

でも相手はスライム。

友達。…でも好きなのだろうか?…いやいや相手はスライム。

そんな揺れ動く少年の心を描いた作品なのですが、中学2年生という設定が絶妙だなと感じました。

かわいいものが好きな男の子はどう思われるのか?というジェンダーを気にする年齢

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
これが小学生だとまた感じ方や接し方も変わります。

女の子を意識するようになってきた年齢(中学2年生)の心を日常コメディを織り交ぜながら描いています。

見やすいので当然小学生以下の子どもさんでも楽しめます。

しかし、大人でも何か感じる部分があったので感想をシェアしようと思いました。





大人に向けたメッセージが隠されている

サイトを調べてみると思わぬ表現でこの作品が紹介されていました。

“『コロコロ』史上初の「日常ラブコメディ」作品”との事。

これ、ジャンルはラブコメなんですね。

全然そんな感じはしなかったのですが、小学生のような子ども層からしたら“ラブコメ入門”みたいな感じで楽しめるのではないでしょうか?

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
でも大人的な視点で見てみると、ラブコメというよりも中学生という多感な時期に感じる葛藤などが盛り込まれているように感じます。

中学2年生ともなると周りの目が気になる年頃です。

かわいいものが大好きな河合井君(かわいい君)は自分の気持ちに素直に可愛いぬいぐるみなどを愛でたいのですが、周りからの目や恥ずかしいダサいと思われる事に抵抗を感じるようになります。

好きな女子が出来たらなおさらです。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
そうなってきたら相棒として一緒にいた“ぷにる”を疎ましく感じるようになってきます。

ここの男子特有の心情が、中学生という年頃を経験してきた方全員に刺さります。

周りなんて気にせず自分の大好きを追求すればいいのですが、多感なこの年齢の子どもは気にしてしまいます。

相棒の“ぷにる”との距離感を考えるようになる河合井君。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
時にはけんかして“出ていけ!来るな!”なんて心にもない事を言ってしまう河合井君。

“命の宿った唯一無二の相棒なんだからもっと仲良くしたらいいのに”と感じつつも、思春期の河合井君の周りの目を気にする気持ちも分かるこちらとしては、何とも言えなくなります。

このアンバランスが日常コメディを深めてくれます。

河合井君は恋と相棒の二極の間でどんな立ち位置を目指すのでしょうか。

…と、ここまでで感じるのは、子どもが視聴したら単なるゆるいラブコメディとして見れるけど、大人が見れば大人になっていくやや手前の少年の心情を昔を思い出しながら見れる作品で、また違った感覚で楽しめます。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
途中、御金賀アリス(おかねがありす)という名前からいかにもというようなキャラが出てくるのですが、強くて可愛くてお金持ちで隙が無いように見えて、どこか親がかまってくれない寂しさを見せたりして妙に印象に残りました。

大人が見てたら思わず切なくなりますが、その心情を代弁して寄り添ってくれるキャラ(メイドの宝代さん)がいてくれるのでバランスが取れてます。

あまり強引なキャラがいない分、ここで御金賀さんのサイドストーリーを描き過ぎたら物語の雰囲気がそっちに流されそうなので、うまくバランスを取って子どもが気兼ねなく見れるようにしています。

彼女は命が宿った相棒“ぷにる”が羨ましかったんだと思います。

いくらお金をつぎ込んでもどうにもならないことがある。そういう部分にいずれは自分自身できちんと踏ん切りをつけて前に進んでいく…乗り越え大人になっていくのだろうか…とかまるで娘の成長を見るような目で見てしまっています。

こういうふうに“この部分は…う~ん…”と感じさせるというか見終わった後、妙に大人でも余韻残るシーンがいくつかあるのが隠れた魅力です。

子ども向け作品に見えて大人にも刺さる仕掛けがあるので、まだ見ていない大人の方は機会があれば是非視聴をお勧めします。

とはいえ大人でもゆる~く見ていてもいいんです。

河合井君と同じ年齢だった頃の自分ならどう感じただろうかとか思いながら見れば違った楽しみ方ができます。

この奥深さを感じさせる所……何気に『小学館漫画賞を受賞』を勝ち取ったのは伊達じゃないですね。





令和という時代に合わせたテイストで

全体を緩く視聴していましたが、あの頃を思い出しながら見れば面白味も変わりますし、子ども世代に見やすいようなバランス感があります。

シリーズ化してドラえもんの後釜にしてもいいのではないかと感じるほど。

“ドラえもん”や“サザエさん”は昭和の時代に作られた作品です。

でもそろそろ令和に合わせた新しいスタイルのホームアニメが生まれても良いかと思うのです。

“ぷにる”にはそのポテンシャルを感じます。

だってドラえもんに出てくるようなレギュラー級のキャラが揃っているのです。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
“剛やん”“ホネちゃん”

なんだこの某作品から出てきたようなキャラは?

しかも性格がかなりマイルドになってるし…

ドラえもんだと“剛田 武(ごうだ たけし)”“骨川 スネ夫(ほねかわ スネお)”ですが…これ確信犯なのか?

令和版マイルド化されたジャイアンとスネ夫はこんな人畜無害なキャラになるんだな~。

ジャイアンのやり方は令和だとNGだけど、このマイルドなジャイアンなら良いのではないでしょうか?

スネ夫にしても、お金があるのを自慢するような格差をちらつかせる品の無さは令和では受け入れられないので、そんな設定すらとっぱらったマイルドなキャラになっています。

不思議とこの2人は何の説明も無くても受け入れられました。

この勢いでドラエもん乗っ取る気か?と感じるくらい。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
しずかちゃん的キャラもいますが、やや癖のある“聖母全開のしずかちゃん”になっていますが、これも令和というアニメ界で尖った部分が無いと忘れられるくらい乱立するヒロイン達の中で生き抜いていくための生存戦略なのかと感じてしまいます。

兎に角最近というか令和に入ってからのヒロイン達は癖があるキャラが目立ちますので。…というか目立ったもん勝ちかも。

© まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会
他、出来杉君のようなポジションのキャラはいませんが、河合井君との対比のようなノリで、好きなものをトコトン追及しているキャラも出てきます。彼は彼で主人公との心情の対比で見れば実に分かりやすいので、主人公とセットで客観的意見ていけば味のあるキャラクターだと感じました。

この作品は2期も早々と制作が決定しています。

2期が始まったら普通に視聴すると思います。中学2年生の揺れる心情をコメディで強引にスライムみたいにかき混ぜた作品にも期待したいですね。

そして狙ってるかどうかは別として、是非シリーズ化して“ポスト・ドラえもん”を掴んでほしいものですね。





今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。