感想『異世界失格』与えられた力でイキるのはやめよう

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会

切り口が面白いのですぐにハマった

レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。

周作x.com/DarvishShu)です。

異世界で活躍する主人公…非常にたくさんのタイトルが出ています。

その中には奇抜なものもあり、“異世界モノ”自体が飽和状態になってるのではないかと微塵も感じさせないくらい魅力的な作品が出続けています。

そんなレッドオーシャンになっている異世界の物語にまた一風変わった若者(年齢的にはそうだと思う)が殴り込みをかけます。

まるで芥川龍之介を彷彿とされるようなキャラ。

“恥の多い人生だった”とまるで達観したような生き様をしていて、それが他には無いキャラの魅力を醸し出しています。

このやや癖のある主人公…彼が何を思いどのような動きを見せていくのかというのを考えながら見ていくのもこの作品『異世界失格』を楽しむ秘訣ではありますが、視聴してみてこれは現代人に刺さる部分が多いと感じたので、レビューにまとめさせていただきたいと感じました。

自分の弱さをしっかりと認め、苦も無く与えられたチートスキルでごまかさずに裸の自分で向き合う先生。

モロ「人間失格」のあの人やん!
そんな飾らない人間性によって多くの女性を引きつれてしまう恥の多い主人公の生きざまを楽しんでいただきたいです。

タイトル画面も特徴的で、これを見るだけでもこの作品のカラーがわかりやすく、期待が持てます。





トラックは異世界行の切符?


異世界モノが流行り出してからいつのまにやら出来た設定があります。

それは“トラックに引かれて死んで異世界に行く”というもの。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
コレ、真に受けて本当に生きづらいと感じている若者がトラックに飛び込まないように注意しないといけないレベルになってます。

主人公“達”もトラックから異世界に連れていかれます。なんだか宝くじみたいです。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
そんな冒頭の流れ、この物語となる異世界に連れてこられるまでの経緯が初めに説明されるのですが、これが面白い。

転生した人間を女神官さんが出迎えてレクチャーするのですが、『勇者を落とす“さしすせそ”』とか何というか説明の仕方が文学小説のコメディみたいで全然説明っぽくないのです。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
レクチャーする女神官さんも癖のある方で結局同行することになったりで、異世界モノの冒頭の“つかみ”としては非常に入りやすい流れでした。

クリエイターを目指している方は、この物語の導入部分が上手いので是非1話だけでも視聴を試みてみるのが良いかと思います。

1話目って大事ですからね。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
視聴者のワクワクと主人公のやる気のなさが良い感じに混ざった中異世界の道中は進んでいきますが、この道中も一味違ったテイストで描かれていきます。

まるで現世で満たされなかった人間が、ここ異世界で大いに反省し、再び現世に戻り人生をやり直すという人生救済の場になっているのです。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
そしてその救済のきっかけになる人物が主人公である先生の言葉。

文豪の先生だけあって、その語りは非常に説得力…というより味があります。

この辺は実際に作品を視聴してみて、先生のお言葉を聞いてみて下さい。現代人に刺さるものばかりです。

異世界に行けたらあなたはどうする?

異世界モノが流行っているというのはもうずいぶん前から知られています。

なぜ流行るのか?

それは現代社会が生きづらいあまり、別世界に行って自分が尊重される中で活き活きと自分らしく居たいという願望の表れではないか…異世界に理想の暮らしを投影しているという意見があります。(他にも色々考察されていますのであくまで一例です)

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
もしあなたがトラックに無事(?)はねられ、異世界に行けるとしたらどんな事をしてみたいですか?

この異世界にも何人かの日本人が転生されています。

異世界転移者仲間がいるのです。

しかし日本での現世が理不尽で辛かったのか、やたらとこちらの世界では威張り散らしてイキってる人間が多いです。

現世で満たされなかった想い、そして元の世界での無様な人生をここで発散させんと暴れまわっているのでしょうね。

そんな心情を受け止めた上で、主人公は転生した日本人達を改心させます。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
するとその人間は現世に戻っていく…という仕様なのです。

穏やかな顔になって……

まるでこの世界から無事成仏させて現世に戻していくみたいな感じで、そのスキルこそ主人公の先生が持つものなのですが、異世界の住人からしたら威張り散らして迷惑に感じていた転生者を元の世界に強制送還してくれるわけなので、救世主みたいな印象になります。

結果、先生はそのつもりがなくても感謝され、崇められ、知らん間に神格化され、あこがれを抱かれ…仲間が増えていきます。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
その妙にかみ合っていない部分はそれで面白いのですが、この作品の魅力は自分の中の弱さと向き合う事の重要性ではないかと感じます。

主人公ことセンセーの言葉如何でなんとでもなります。

でもあまりにも“自分の人生をしっかり見つめ直しなさい”と説教臭くなると、見ている視聴者もエンタメ感が感じられなくなり離れていく可能性もあります。

だから先生の心情と相手とのすれ違いを面白おかしく描きながら、伝えたい部分はその側面に仕込ませて物語を組み立てています。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
この辺の構成が非常に上手いです。

もう異世界モノとかいうジャンルで区切らず、生き方に悩んでいる全ての方に楽しみながら見てもらえる作品として広めたいと感じました。

主人公の先生は、力があってもイキらず、人にどうこう指図や断罪するでもなく、マイペースを続けるので唯一無二の文豪キャラとして印象深かったです。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
無駄にバトルで解決を計ろうとしないやり方も好感が持てます。




この勢いと語りかけでどんどん異世界転移者を改心させ、迷惑な行いを悔い改めさせ(気付かせるという言い方がいいかもしれません)元居た世界にバンバン強制送還させていくんだろうなと感じた所で、1クールという物語は一旦幕引きになります。

でもその後の先生の活躍に関しても非常に興味があります。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
様々人間と人生がある分、その一人一人の思いに寄り添っていくのは困難もありますが、自分達が学べる部分も多いでしょう。

交戦的な人間も多い中、どう対処していくか見ものです。

新しいタイプの異世界ヒーローは、元の世界ではとても恥の多い人生だったかもしれません。しかしこの世界では称賛の多い人生を楽しんでもらいたいものですね。

©野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
ヒロインさんとの未来にも幸あれ。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。