伝える部分にフォーカスしてあとは“パリィ”する
レビュワーの皆さん 閲覧いただきありがとうございます。
周作(x.com/DarvishShu)です。
今回レビューを書かせていただくのはこの作品『俺は全てをパリィする』
“パリィ”って一体何だ?という事で視聴前にまず言葉の意味を確認。
どうも英語で「受け流す」という意味だそうで、本当に主人公に振りかかる災難全てをパリィできるのかという部分に注目して見ていけば良いのかな…と思いながら視聴をしてみました。
視聴をしてみて感じた事として“構成力の勝利”という点。
以前『天穂のサクナヒメ』のアニメレビューを書かせてもらったのですが、あの作品は魅力的な世界観やエピソードが沢山ありすぎるあまり逆に1クール(12~13話)の中にうまく詰め込めずに終わってしまったという感想を書かせていただきました。
しかしこの作品はそれとは真逆とまではいいませんが、本当に視聴者さんに魅せたい部分以外は極力省くというか“パリィ”していて物語の中にゴチャゴチャ感が無く、すっきりしていました。
伝えたいテーマを絞るとすっきりする
この作品の主人公のスタート地点はとある異世界の国。
当然説明が無いとこの世界の大まかなイメージが沸きません。
他に国同士のいざこざなどは勿論、主人公の暮らす街にあるギルドの仕組みやクラス階級など掘り下げれるなら、かなり時間を要するのが予想されます。
ヒロイン格として出会う女の子は王国の姫だったりします。そうなれば姫という立ち位置から広がる王国の組織…そしてそれに対峙しようとする国の存在など、まぁそれなりに尺を使って描かないと視聴者に“入って”きてもらえないだろうという部分があります。
結構壮大な設定ゆえ、作品の世界観を知る為に物語の尺をかなり使ってしまうのではないか?1クール内でどういう爪痕を残すんだろうか?
初めはこんな感覚でした。
でもそこはうまく“パリィ”しながら主人公のノールさん視点で描かれていました。
全部を説明してたら尺が足りなくなります。余計な部分を流しながら、あくまで主人公のスキル“パリィ”にフォーカスを当てて描かれていました。…あと勘違い。
だからゴチャゴチャしてなくてシンプルで分かりやすかった。
物語の世界観は複雑で(特にクレイス王国との外交面)説明を入れようと思えばいくらでも入れられます。でもアニメの尺は1話につき約24分。説明に極力カロリーを割かず、その分主人公の下町での生活を通して町の様子を描いたり、勘違いを裏手にとって国力や相手の心情を説明したりとこの作品はテーマが一環していました。
タイトル通り、余計なものはパリィしてうまく伝えたい部分を絞っています。
だから1クール(12~13話)構成の作品としてはかなり見やすくて優秀だなと感じます。シンプル故お勧めしやすいです。
作り手としては常に“作品のこの部分はきちんと伝えたい!”という思いは確かにあります。でも限られた尺の中で時には断捨離をしながら構成していかないといけません。そうでないと物語が駆け足みたいになったり説明不足で視聴者を置き去りにしてしまう可能性もあります。
世界観がある程度壮大なら、一度置き去りにされた視聴者は戻ってきません。
だから本作の象徴“パリィ”の部分にフォーカスを当てて、その軸を最後までブレることなく描ききってくれたように感じます。
その他、各話に設定されたサブタイトルも面白いので注目してほしい所。
逆勘違いは吉と出る
この物語のもう一つの魅力が主人公の“勘違い”という視点。
さすがに“城のような家”という認識は無理があるんと違うのか?とか視聴者側から突っ込みたくなる部分もありましたが…
バリバリに強い主人公が相手を蹂躙するパターンの作品はいくつかありましたが、主人公のノールさんは自分が「まだまだ未熟だ」と勘違いしたまま故非常に謙虚。
“謙虚さ”が自分自身の成長は勿論、外交や人間関係も上手くいく秘訣なのではないかと感じました。
どっちかというとコミカル面をそこに見出したような印象でしたが実際にパリィのスキルだけでなく謙虚さが血気盛んな周りとの軋轢をパリィできたのかと感じます。
作者がそこを狙って描いているのかどうかは分かりませんが、作品全体を通して主人公に対して悪い印象を持った方はいなかったでしょう。
終わり方も含め、そういう点でもこの殺伐とした世界でも温かみのある雰囲気に変えられたのではないかと感じます。
まぁヒロイン勢の掘り下げが薄かったので女性キャラの印象が薄くなった感はありますが、これは一種の等価交換ではないかと感じます。
“パリィ”というものが作品を通して視聴者さん達の印象に残れば『勝ち』だと感じます。
コミカライズの方では、さらなる物語が展開されています。ノールさんの更なる活躍と“いつ気付くのか”が気になる方は是非購読をお勧めします。
こっちだと女性陣やその王族家系にもスポットを当てられて描かれていますので、読んでから改めてアニメを見たらまた印象が変わるかもしれませんね。また違った視点で物語を深く楽しめるでしょう。
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