感想『ブルーロック』親の庇護から離れ戦地へ赴く若者たち

レビュワーの皆さん 閲覧ありがとうございます。

周作twitter:DarvishShu)です。

今までのスポーツ漫画というのは、あまりフォーカスを当てられてこなかったとはいえ親の庇護のもとですくすく育った主人公達が、フィールドで活躍する物語がスタンダードでした。

活躍できるのは、親の陰からの応援のおかげだったりします。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
しかしブルーロックという物語の主人公たちはそんな親元を離れ、下克上むき出しの世界に文字通り監獄され、潰しあいの競争社会に身を投じていきます。

序盤からそんな潰しあいの世界の残酷さと過酷ながらも一番になりたいという野心むき出しの世界が口を広げてくれます。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
物語の“掴み”はこれ以上ないくらい刺激的でゾクゾクさせてくれました。
「ブルーロック」。監獄の中を切り込んでいきたいと思います。

是非、レビューにお付き合いください。





一番になりたいという強い気持ち

過程なんてどうでもよい。結果が全て。勝ったものが生き残っていく。

「ブルーロック」という名のサッカーのストライカーを決める為の監獄。その中でのルールは実にシンプルなのですが、視聴した皆さんはどう感じたでしょうか?

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
確かに勝てないと勝負の世界ってのは面白くないです。

でもサッカーをやってる人から見れば、自分がその中で戦っていきたいと感じますか?

「いや…この中からストライカー一人とか…さすがに俺無理じゃん…」とか感じませんでしたか?

自分がもしサッカー得意だったとしても、まずこの脱落したらサッカー生命経たれるうえ、270人中1人くらいの倍率の中、生き残っていけるような気がしません。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
相手側だってなりふり構っていられないでしょう。こいつは蹴落とせそうだと感じたら、情も何も無しです。

殺し合いをするわけではないのですが、感覚的にそういう錯覚を持ってしまいます。

自分がこのブルーロックにエントリーされたら…そう考えると、その時の自分の心理状態が試されます。

「面白れぇじゃんか…」と思う人もいれば、「そんな…たった一人とかムリゲーじゃね」「ふざけんなこんなのサッカーでも選考でもない」

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
色々な思いがあると思いますが、もうこのブルーロックという名の監獄に入ってしまえば個人の理屈なんて関係ありません。

結果を出して生き残るのみです。

最後の一人になるまで生き残りたいという強い生存意思です。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
このマインドを高校生のころからたたき込むのは、親の庇護から急に離れた子どもには厳しいでしょう。自分の中の正義を振りかざしてしまうでしょう。

でも従うしかないのです。この監獄内では。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

キャラ数すごい!男ばかりだけど

極限の状態でも生き残りをかけて戦うキャラクター達はとにかく魅力があります。

一度挫折を経験した人間なんかは殻を破ることができれば強いですし魅力的です。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
生まれながらにして才能のあるキャラもいます。そんな天才に対し、俺なんかじゃどうしようもないなんて感情をかなぐり捨てて挑まないと、待ち受ける先は脱落です。

この必死さがモロに伝わるからこそ視聴者たちは見入ってしまうのでしょう。

各キャラの人気も高く、既にいろんなグッズが出回っています。自分の認知している限りでは蜂楽廻 (ばちらめぐる)君が人気あります。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
やっぱり極限の中でも笑みを見せる事が出来るキャラは、底知れないポテンシャルと魅力を感じさせるのでしょうか?

とにかく話が進むごとにどんどん魅力ある選手が出てきます。こんなにキャラを出して見分けや組み分けなど混乱しないのだろうか?…と思ったのも初めだけで、集中して彼らの真剣勝負を見ているせいか、みんなの特徴などはすぐに覚えてしまいました。

極限の中での戦いが、我々にそうさせるのでしょうか?

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
主人公の潔世一は、初期段階では下から数えたほうがいいくらいの選手で、その上控えめな性格だったので、濃いメンバー内では、“主人公だから”という部分以外ではそんなに目立っていませんでした。
むしろ他キャラに対しての解説役か?と思ったくらい。

しかし自分のゴールで勝つという“エゴ”をだんだんむき出しにし始めてから急に魅力が出てきます。

その“進化”が魅力的に見えたのでしょう。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
アニメの魅せ方も素晴らしく、圧倒的なテクニックを補う“ゴールに対しての嗅覚”がすさまじく、においがした時の顔つきの変わりようや、俯瞰したフィールドの分析などは、アニメーターさんの表現で一気に緊張感の意あるシーンに化けています。

ゴールへの嗅覚から一気にチームメイトと駆け上がっていく瞬間瞬間を音と音楽で滅茶苦茶興奮するように作り上げていきます。

この一瞬にかける!このチャンスを逃さない!ってのを、青い目の度アップの表現だったり、スローからの細かい駆け引きやアイコンタクトだったりと、まるでこの作品のために作り上げたような作画はお見事としか言いようが無いです。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
作画のギアが一気に上がります。
©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
2024年。1期を終えた後、このブルーロックは劇場版が公開されました。
現時点でまだ見ていませんが、大画面であの青い目とゴールに対する嗅覚などどんな感じで表現しているかが気になります。

それくらいゴール前の攻防などはスリリングな魅せ方になっています。この辺の緊張感が他の作品にはない魅力であり、見ている自分も一気にアドレナリンが出てくるのを感じます。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
滅茶苦茶興奮するシーンは、ものすごく丁寧に作り上げています。実際のサッカーのストライカーの魅力に取りつかれてしまうかのような魅力ある描き方をしています。

エゴイストでありながら冷静な分析力

自分はあまりサッカーは詳しくないのですが、そんなサッカー初心者でも分かるくらい、サッカーの面白さ、ストライカーのマインドを描いています。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
全員ストライカー出身ということで、初めは自己中心的にボールを追いますが、やがて冷静に分析したり思考を巡らせたりと勝利の形をみんなで模索していきます。

そこがしっかりしていないとエゴイストが成り立ちません。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
自分をむき出しにしてボールに向かう事も大事ですが、サッカーで勝利するためにどういう思考が必要かというのを冷静に分析するのも大事です。

主人公の世一君は目に見えるアビリティよりも、見えない分析したり俯瞰してみる力があったから監獄で生き残れています。

圧倒的なゴール至上キャラではなく、こういうタイプの選手を主人公に据えたのも作者の意図を感じます。

先ほど書いたように、はじめはちょっと控えめだった世一君がだんだんストライカーとしての本能に目覚めていく様子は、見ている視聴者さんを虜にしてゾクゾクさせてくれます。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
選手たちの「脱落したくない」という生き残りへの執着は、どの回も熱いエピソードだらけです。
©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
ただ、自分たちも監獄の外から眺めるだけではなく、何か生き残りをかけたチャレンジをしてみるのはいかがでしょうか。

彼らのような“ここで生きていくんだ”という実感が出るから。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

余談ですが、出てくる登場人物の殆どが男性という珍しい作品でもあります。女性キャラはほぼ1名。ホントに刺身のツマみたいな感覚での登場でしかありません。硬派です。

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

この狂ったような空間と魅力あふれる空間が混在する世界『ブルーロック』の虜になっていく男たち。

そんな戦いの結末に、目が離せませんね。次から次へと現れる強敵にワクワクが止まりません。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。